CEA(Consumer Electronic Association)の推定によると、2008年のHDTVの売上げ台数は2007年の2072万台から20%の成長をし、2510万台になる。不況の影響を受け、HDTVの成長率は鈍るが、CEAは2009年の売上げは10%の成長で、2751万台になると予想している。
(CEA)
HDTVの売上げの増加により、2007年にはHDプログラミングが急増した。2006年ではHDで放送を行っているネットワークは、4大地上波ネットワーク、プラス、ESPN、HBO等の一部の多チャンネルネットワークで、合計20程度でしかなかった。それが、2007年に入り、主要な多チャンネルネットワークがこぞってHDで放送するチャンネルを作り、HDネットワークの数は100を越えている。
このHDチャンネル数の増加のトレンドを作り出したのはDBS事業者のDirecTVで、同社は積極的に衛星を打ち上げ、HDのチャンネル数を増やしてきた。現在、通信会社を含めた他の多チャンネル事業者もHDのチャンネル数を増やしているが、現在でもDirecTVがHDチャンネル数ではリードをしている。
TVネットワークも多チャンネル事業者もHDプログラミングの提供に力を入れている。しかし、必ずしもHDTVを購入した世帯がHDプログラミングを視聴している訳ではない。既存の多チャンネルサービスはSDで提供されており、HDプログラミングを受信するにはSTBをHD対応の物に取り替え、HDサービスにアップグレードする必要がある。HD放送は地上波でも提供されているが、多チャンネル放送のSTBにつながれているTVの殆どは地上波アンテナをつなげていないので、地上波HDは受信していない。
Leichtman Research Group(LRG)社の調査ではHDTVを保有している世帯の35%はHDプログラミングを受信していない。その大きな理由はいかにしてHDプログラミングを受信するか分かっていないからである。LRG社の調査ではHDTV購入者の58%はHDTVの購入時にいかにしてHDプログラミングを受けられるかの説明を受けていない。TV視聴世帯の多くは、ほっておいても2009年2月17日のアナログ停波を機に、多チャンネル放送もHD化をすると信じている。
HDTVの売上げは増え続け、HDTV保有世帯の35%はまだHDプログラミングを受信していない事は多チャンネル事業者に取り、大きなオポチュニティーである。来年2月17日が過ぎても、放送は自動的にはHD化しないことに気がつき、多チャンネル事業者にHDサービスの注文が殺到する可能性がある。
しかし、不況はこの機会に悪い影響を与える。SDからHDにアップグレードするには月額で20ドル程度高くなる。不況の時に$20の追加料金は大きな金額である。不況になると家にいる時間が増え、TVの視聴が増えるとの予測がある。だが、TVを見る時間が増えても、HDの為に$20を余分に支払うか問題である。
不況とは言え、2009年2月17日のアナログ停波により、新しいテレビの購入が進むことは確実である。購入されるテレビの殆どはHD対応である。HDTVは売れるが、不況により多チャンネルサービスをHDにアップグレードしない世帯が増えていくと、アメリカのHDTV世帯の半数近くは実際にはHD放送を見ていないこと言う、おかしな状況になるかも知れない。