AT&Tはこの8月にConnecTechと呼ばれる、家庭向けの出張サポートサービスを始めた。ConnecTechは家庭におけるPCのトラブル解決、ホームネットワークの導入、ホームシアターの設置等、PCとホームエレクトロニックス製品の出張サポートを行う。価格はホームネットワークの導入が$99から、フラットパネルTVの壁への取り付けが$147から、PCの修理は$179ドルからとなっている。また、電話サポート、遠距離診断のサービスも行っている。
この家庭向けの出張サポートサービスは、Geek Squadと呼ばれる会社が有名にした。Geek Squadは1994年にPCの出張修理の会社としてスタートし、2002年に大手家電チェーンのBest Buyが30億ドルで購入した。Geek Squadは現在、PCのサポート・修理だけでなく、ホームシアターの設置、カーオーディオの取り付け、スモールビジネス向けのテクニカルサポート等も行っている。Geek Squadはメーカーのサポート外のトラブルへの対応、また、フラットパネルTVの壁取り付け等の要望に対して、定額制の明朗会計のシステムを導入する事でポピュラーになった。
Geek Squadに対抗する為に、Best Buyの競合のCircuit Cityは2006年にそのサポート部門をFiredogと名付け、出張サービス事業に参入している。
AT&Tはこれまで家電ディーラの付加価値サービスである領域に参入した事になるが、これは今後のトレンドになっていくと思われる。多チャンネル事業者はサービスを導入する為のサポート組織を持っている。以前は、同軸ケーブルを家庭に引き入れ、TVに接続する程度の作業であったが、ブロードバンドサービスの提供、そして多チャンネルサービスのデジタル化により、導入作業は複雑になっている。現在の多チャンネルサービスのインストール要員はデジタル家電、PC、IPネットワーク等も理解している必要がある。
AT&TはそのU-Verseサービスの為に、その導入を行う組織を新たに作り、スタッフを雇い、トレーニングを行っている。その資源を有効に使い、新しい収入源を作り出すことは不思議ではない。AT&TはU-Verseの普及の戦略の1つとして、インストール時のユーザの満足度を高める努力をしている。U-Verseを導入した家庭は、その導入に満足すれば、その後ConnecTechのカスタマーになる可能性がある。また、ConnecTechを利用した家庭は、ConnecTechに満足をすれば、U-Verseに乗り換える可能性もあり、相乗効果がある。
AT&TがConnecTechを発表した2ヶ月後に、VerizonもExpert Careと呼ばれるサポートサービスを発表した。Expert CareはPCを含めた、ホームエレクトロニックス製品のサポートを行う。サービスは3種類ある。製品のプロテクション・サービスは月額$4.99から$19.99で製品の補償を提供し、故障時の修理、交換を行う。技術サービスは月額$14.99で、PCのウィルス感染の対応、ホームネットワークのトラブル等に遠距離診断と電話サポートで対応する。そして、出張サービスは1回、$99.99から$249.99の価格で、PCの修理、ホームシアターの設置等を行う。出張サービスは現在、Verizonのスタッフではなく、Circuit CityのFiredogとの契約で行われる。
ケーブルTV事業者のCox Communications等もサポートサービスを始めているが、AT&Tの様に大々的ではない。しかし、競合のAT&T、Verizonがサポートサービスに力を入れ始めているのを黙って見ている事は無いであろう。
