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ウィルミングトン市がアナログ停波を完了 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.52)
2008年9月25日号

 ノースカロライナ州のウィルミングトン市が一足早く、アナログからデジタル放送への移行を行った。これはFCCの呼びかけにより行われた、先行実験として行われたもので、ウィルミングトン市は米国のアナログ停波期日の2009年2月17日より約5ヶ月早い、9月8日の午後12時にアナログ放送を終了し、デジタルへの移行を一足先に完了させた。

 ウィルミングトン市は210あるDMA(Designated Market Area = TVマーケット地域)中、135番目の都市で、約197,760のTV視聴世帯がある。その内、約70%がケーブルTV(地元事業者はTime Warner Cable)に加入している。

 事前の周知活動が功を奏し、ウィルミングトン市でのアナログ停波の実験は大きなトラブルなしで完了した。40ドル分のDTVコンバーターのクーポンを配布しているNational Telecommunications & Information Administrationによると、ウィルミングトン市の37,500世帯から69,000枚のクーポンの申し込みがあった。この47%はケーブルTV等に加入していない地上波のみの世帯からであった。アナログ停波が9月に行われるとの発表がされた2008年5月以来、DTVコンバーターのクーポンの申し込みは300%増えた。アナログ停波前日の日曜までに27,000枚のクーポンが使われ、地元の量販店のWal Martでは金曜にDTVコンバーターは売り切れになった。また、ケーブルTVへの加入も増え、Time Warner Cableは約500世帯の新規加入があったと報告している。

 アナログ放送の終了後から5時間で、地元の放送局に対してあった問い合わせの電話は81件と少なかった。問い合わせの殆どはDTVコンバーターの設定に関する物で、アナログ停波自体を知らなかった視聴者は1人だけであった。FCCのDTVホットラインに対しのウィルミングトン市でのアナログ停波に関する問い合わせは2日間で797件あった。その内、ウィルミングトン市の住民でアナログ停波を知らなかったのは23人であった。160件の問い合わせは、DTVコンバーターの設定方法に関してで、178件は受信不良等の問題であった。DTVコンバーターはアナログTVとは異なり、事前のチャンネル設定が必要で、これが多くのトラブルの原因となった。ウィルミングトン市以外の住民から、なぜウィルミングトン市の局からの放送が見られなくなったのかと言う問い合わせも232件あった。

 FCCはこの実験からの教訓として、より地元に根付いた周知活動の必要性、非常時の対応などを上げている。ウィルミントン市では消防隊がアナログ停波の当日、DTVコンバーターの設置の援助を行ったように、FCCは地元レベルでの協力が不可欠として、地上波に頼った視聴世帯が多い約80のDMAにFCCのスタッフを派遣し、地元での協力体制を確立させる計画を発表した。

 また、今回のアナログ停波の時にハリケーンが接近しており、停電が起きた場合、DTVコンバーターがバッテリー電源では働かない事が問題になった。実際には停電には起きず、問題は無かったが、FCCはDTVコンバーター用のバッテリーパックの販売を呼びかけている。

 最も大きな教訓はDTVコンバーターを早く買わせる必要性である。ウィルミントン市ではアナログ停波の数日前に購入が集中し、主要な店舗では売り切れの状態が起きた。2009年2月に全米規模で、このような購買の集中が起きると、大きなトラブルになる。DTVコンバーターを早く買わせる事が出来れば、この様な品切れの問題は減り、また、事前に設置し、設定等のトラブル解消の時間があり、アナログ停波時のパニックも減ると思われる。

 $40のクーポンが提供されているが、販売されているDTVコンバーターは$60程度の製品が多く、$20程度は持ち出しになる。これが、DTVコンバーター購入を遅らせている理由になっているかも知れない。FCCのマーチン会長はEchoStar社等が$40で購入出来るDTVコンバーターを製造しているのにかかわらず、店舗で販売されている製品の多くは$60である事を問題視し、家電店を代表するConsumer Electronic Retailers Coalitionに対して、各店舗で最低でも1モデルは$40の製品を置くように伝えた。

 視聴者がなぜDTVコンバーターの購入を待つのかは明らかでないが、DTVクーポン支給プログラムの運営上の問題になり始めている。ウィルミントン市では69,000枚の申請があったが、実際に当日までに使われたクーポンは27,000枚であった。NTIAの発表では全米で、毎日110,000枚の申し込みがあるが、クーポンの償還率は49%でしかない。クーポンの期日は90日で、失効したクーポンの額面は予算に戻され、再支給される。しかし、再支給される率が高くなると、郵送料、管理料等のコストが増すことになる。DTVクーポン・プログラムの総予算は15億ドルで、その内、13.4億ドルがクーポン自体、1.6億ドルが運営費に充てられている。NTIAは再支給が増えていることで、運営費が足らなくなるとして、クーポンに使われる13.4億ドルの予算の内、700万ドルを運営資金に回す為の許可を議会に求めている。


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