DRI テレコムウォッチャー  from USA

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NSI Research社の デジタル放送とブロードバンドTVの情報サービス
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ブロードバンドでの勢力を増すケーブルTV事業者 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.48)
2008年5月25日号

 アメリカにおける通信事業者の戦いは電話事業者対ケーブルTV事業者のトリプルプレーでの戦いになっている。ケーブルTV事業者がビデオで優っているのは明らかである。VerizonのFiOS TVの加入世帯数は2008年3月末で、120万を越え、有線の多チャンネル事業者としては10位になった。しかし、最大手のComcastの2400万世帯と比べれば20分の1でしかない。AT&T、Verizonはそのビデオサービスへの加入者を増やしているが、ケーブルTV事業者が加入者数を失っている訳でもない。2008年第1四半期の結果ではComcastは57,000の加入者を失っているが、2位のTime Warner Cable(TWC)(1300万世帯)は55,000の加入者を増やし、5位のCablevision、9位のMediacom等も加入者を増やしている。

 ケーブルTV事業者がビデオで優っている様、電話事業者が電話事業では勝っている。固定電話ではケーブルTV事業者は加入者数を増やしているが、電話事業者が圧倒的に多くの回線数を持っている。しかし、固定電話市場では電話事業者は回線数を失い続けている。これはケーブルTV事業者の影響以上に携帯電話、ブロードバンドの普及のインパクトが強いが、市場は減少している。この中で、ケーブルTV事業者はその固定電話サービスへの加入者を1500万世帯に増やすことに成功している。ケーブルTV加入世帯数は65,000万世帯であり、ケーブルTV世帯の23%はケーブルTV事業者の電話サービスに加入している事になる。

 ブロードバンドサービスではケーブルTV事業者が最初に市場に参入し、リードをしてきたが、ここ数年は電話会社がDSLを値下げし、シェアを増やしてきた。これに対して、ケーブルTV事業者は価格競争をするのではなく、DSLより高速なサービスを売り物にしてきた。電話会社もより高速なDSL、あるいは光ファイバーのサービスを始めているが、まだ提供地域は少なく、より高速のブロードバンドへの需要が増す中、ケーブルTV事業者が巻き返しを始めている。調査会社のLeichtman Research Groupの報告では2008年第1四半期のケーブルモデム加入者数は3,466万世帯で、同四半期の加入者追加数は1,193,209であった。電話事業者の提供するブロードバンド・サービスへの加入者数は2,946万で、加入者追加数は1,007,175と、ケーブルモデムを下回った。電話事業者のブロードバンド・サービスへの加入者数追加で、ケーブルモデムのそれを下回ったのは2004年の第3四半期以来の事である。

 ケーブルTV事業者がブロードバンド・サービスの加入者数追加で電話事業者に優った事は大きな事である。ビデオではケーブルTV事業者が、電話では電話事業者がそれぞれ有利であり、ブロードバンドがこの戦いで大きなインパクトを持つ。より高価だが、高速なサービスを提供する戦略を取ってきたケーブルTV事業者がそのシェアを増やしたことは、高速なサービスへの需要が増していることを意味するのであれば、高速なサービスが提供出来る地域がまだ限定されている電話会社に取り、問題である。

 ケーブルTV事業者がブロードバンド・サービスに力を入れているのにはもう1つの理由がある。それは、ケーブルTV事業者には携帯電話のサービスが無いことである。この分野では電話会社が独占である。Comcast、TWC、Cox、BrighthouseはSprintとのMVNOアライアンスを試したが成功出来なかった。今から、既存の携帯電話サービスに乗り出しても電話事業者との戦いに勝てる可能性はほとんど無い。しかし、モバイル・ブロードバンドの市場はこれからである。固定ブロードバンドサービスで、電話事業者に優っている事をアピール出来、さらに、そのビデオサービスをキラーコンテンツとして使えれば、この戦いに勝てる可能性は十分にある。Comcast、TWC、Cox、Brighthouseの4社は新たにSprintとClearwireのWiMAXのジョイントベンチャーへの投資を行っている。Comcast、TWC、Coxは2006年のAWS(1710〜1755 MHzと2110〜2155 MHz)競売で独自に無線サービスのライセンスも得ている。ケーブルTV事業者は。固定網での戦いと同様にモバイルサービスでもビデオとブロードバンドを制覇し、電話事業者より有利に立つことを狙っている。



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