大手コンテンツ事業者のNBC UniversalとFoxが共同して運営しているインターネットTVのサイト、Huluが2008年3月に正式にスタートをした。HuluはNBC Universal、Foxに加え、Providence Equity Partnersが1億ドルの投資をし、10%の株を得ている。HuluはNBC UniversalとFoxのテレビ番組を配信している。提供されている番組は現在放送中のシリーズと過去のシリーズで、地上波ネットワークのNBC、Foxに加え、ケーブルTVネットワークでNBC、あるいはFox系のBravo、Fuel TV、FX、Sci Fi、Style、Sundance等が提供し、全体で400以上のシリーズがある。また、マリリンモンローを含めた古い映画も配信されている。ビデオには広告が挿入されており、無料で視聴出来る。番組はオンデマンドで提供されているが、広告のスキップは出来ない。しかし、視聴者は広告のジャンルを設定する事が出来る。また、映画に関してはAmazon.comからDVDを購入するオプションも設定されている。
これまでにもABC、NBC等のネットワークは自社のサイトで番組の配信を行ってきたが、HuluはポータルとしてNBC UniversalとFoxが持つテレビネットワークの番組を全部見る事が出来る。Huluは配信するビデオをその2社の系列に限定していなく、他のネットワークにも参加を呼びかけており、CBSは参加を検討していると発表している。
Huluはそのポータルサイトでビデオを配信するだけでなく、パートナー契約をしたAOL、Yahoo!、MSN、MySpace等のウェブサイトからもこれらビデオが利用可能になっている。これらサイトでビデオを視聴するだけでなく、MySpace等のSNSの利用者は個人のページでビデオ、その一部をシェアする事が出来る。SNSのページでは多くのユーザがビデオを非合法でビデオをシェアしてきたが、Huluはこれを合法的に出来るようにしている。
これまでそのコンテンツの流通を厳しく規制し、希少価値を高めることで、宣伝価値を出そうとしてきたTVネットワークに取り、これは大きな改革である。TVネットワークは決まった時間にしか番組を見られなくする事が、その価値を高める物だと考え、一時はDVRに対しても反対をしてきた。しかし、この考えは完全に変わってきている。最初はYouTube、MySpace等でTV番組のビデオが出回ることを取り締まっていたが、TVネットワークはインターネットでTV番組のビデオが流れることで、視聴率が落ちることは無く、逆に話題になることで、視聴率に貢献する事に気がついている。インターネットでビデオがシェアされることを禁止することは不可能である。配信され、視聴率に貢献するのであれば、著作権が侵されないように、自らが管理した方が良く、Huluはそのスタートである。
Huluのスローガンは「どこでも、いつでも」(Anywhere、Anytime)であるが、その配信は米国内に限られ、また、見ることが出来る端末もFlash Playerが走る物に限られ、そのスローガンに偽りがあるとの批判もある。TV番組の視聴が本当に「いつでも、どこでも」になるのは色々と問題がある。その1つは放送局への収入である。TVネットワーク自体は番組の配信の場が増え、それに対して収入が伴えば良い。しかし、番組を放送し、その広告を売る事だけが収入源の放送局には問題がある。ABCは最近、その番組を広告付きでケーブルTV事業者が無料でVODする事を可能にした。放送局からの反対を考慮し、ABCはVODを行うケーブルTV事業者の地元のABC系放送局に対してもVODで提供する番組に対して、広告を売り、収入が上げられるようにしている。