米国の脚本家組合(Writers Guild of America、WGA)の100日間続いたストライキは2月12日に終了した。脚本家組合はAlliance of Motion Picture and Television Producers (AMPTP)との契約更新において、最低賃金の値上げ,DVDで販売したときの再利用料,インターネット配信時の再利用料,それにアニメーション,リアリティー番組に於けるWGAの管轄の扱いで交渉をしてきたが、行き詰まり,2007年11月5日にストライキに突入した。この中でも大きな問題はDVDも含めたニューメディアにおけるビデオコンテンツの再利用料金であった。現在、脚本家は映画、あるいはTV番組がDVD化された場合、最初の100万本まではグロス収入の0.3%,100万本以降は0.36%を得ている。インターネット等のニューメディアでの配信には再利用料は無い。
WGAはDVDの再利用料金は倍増、そしてインターネットでは配信により得られたグロスの2.5%を求めている。これに対して,DVDは現状維持、ニューメディアでコンテンツを販売した場合(Electronic Sell Through、EST)はDVDと同じレート、ストリーミング配信は有償,無償,広告のありなしに関係なく,「プロモーション」利用であり,再利用料は払わないとした。
WGAがストライキに入っている間に、監督を代表する労使組合のDirectors Guild of America(DGA)もAMPTPとの契約更新の交渉を行っていた。AMPTPはダブル・ストライキは避けたく、また、DGAはすでにインターネット配信の再利用料が契約にあり、WGAより交渉は楽に進んだ。2008年1月17日にDGAはESTの場合、TVコンテンツは0.7%、映画は0.65%(それまでの80%増)で合意した。広告付きのストリーミング配信の場合、番組がTVで放送されてから最初の17日間はプロモーション扱いで、再利用料金無し、その後26日間まではTV再放送料金ベースの3%(1時間のプライムタイム番組で約$600)、さらに配信を続ける場合は新たに3%(3%+3%で年合計$1200)で契約した。
このDGAの契約更新で、WGAとAMPTPの交渉も進み始め、WGAは2月12日にストライキを解除した。WGAとAMPTPの新しい契約はまだ組合員の投票(2月25日)で可決される必要があるが、ニューメディアでの配信に関しては下記の様になっている。
- ダウンロード(レンタル):配信者のグロスの1.2%
- ダウンロード(販売)(EST):TV番組の場合、最初の10万本までは配信者のグロスの0.36%、それ以降は0.7%。劇場映画の場合は最初の5万本まで、0.36%で、それ以降が0.7%。
- 劇場映画の広告付きストリーミング:配信者グロスの1.2%
- ストックTV番組の広告付きストリーミング:配信者グロスの2%
- 新TV番組の広告付きストリーミング:ほぼDGAと同じ
これで、TVから新しい番組を消してしまったWGAのストライキは終わったが、再利用料の問題が完全に解決した訳ではない。これから、俳優を代表するScreen Actors Guild(SAG)とAmerican Federation of Television and Radio Artists(AFTRA)の契約更新の交渉が開始しようとしており、ここでもニューメディアの再利用料は重要なポイントである。
俳優には労使団体が2つある。基本的にSAGは劇場映画の俳優の団体、AFTRAはTV番組の俳優の団体であるが、同じ俳優が劇場映画、TV番組の両方に出演する可能性もあり、SAGとAFTRAはこれまで共同交渉を行ってきた。SAGのメンバー数は12万、AFTRAは7万で、4万人はSAGとAFTRAの両方に加入している。メンバー数も多く、有名俳優がいるSAGの方が力があり、AFTRAとAMPTPとの契約は先に切れるが、これまでAFTRAはSAGの契約が切れる6月30日まで待ち、共同交渉をしてきた。しかし、今回の交渉ではAFTRAはSAGを待たずに独自交渉をする姿勢を示している。もし、SAGとAFTRAが仲違いをすると、この問題を複雑化させる可能性がある。