データリソース社では、平成19年度、財団法人機械振興協会経済研究所からの委託により、「日本発グローバル発信型ユビキタスネット向エネルギー変換デバイス調査」を実施しました。調査内容の詳細については、データリソース社にお問い合わせ下さい。
国内の動向と今後の課題
前回は、周りの環境からエネルギーを収穫(ハーベスト)して、電力に変換する「エネルギー・ハーベスティング技術」の研究・製品化動向の概要について紹介しました。
海外の動きと比較すると、最近のわが国での製品化・事業化の動きは、かなり遅れていると言わざるを得ません。
しかし、我が国にも、技術のポテンシャルはあります。無線電力伝送の分野では、宇宙太陽発電の研究やRF-IDの開発で優位性がありますし、振動発電でも、エレクトレット発電やジャイロ式発電など要素技術で面白いものがあります。太陽電池の技術も進んでいます。詳しくは調査報告書本文に譲りますが、腕時計以来のノウハウを結集すれば、製品化能力において、決して諸外国に劣ることはないと思われます。
ポテンシャルがあるにも関わらず、事業化で海外に比べて後れを取っている理由のひとつに、政府支援の有無があると思われます。
前回紹介したように、米国では、軍事技術のひとつとして開発支援が行われてきました。また、欧州では、自然エネルギーのひとつとして、太陽電池はじめエネルギー・ハーベスティング技術に対して政府・EUの支援が行われています。
それに対して、わが国では、政策的支援はほとんど行われていません。個別の研究者が科研費を申請するようなものは見られますが、複数の研究者がかかわる大きな研究課題としては、2006年度〜2010年度の学術創成研究費として認められた「ナノエネルギーシステム創生の研究」(研究代表者:桑野博喜東北大学教授)があるのみです。NEDOでは、高効率熱電変換システムの開発が行われていますが、これは、ユビキタスネット向けを意図しているものではありません。
ユビキタスネット向エネルギー変換デバイスの市場は、未だ萌芽期にあり、市場が自律的に発展していく段階には来ていません。欧米のように政府主導で技術開発、製品化を進めていくことが、日本にも求められます。
今後、ユビキタスネットの普及拡大につれて、市場はグローバルに拡大していくものと思われます。日本の国際競争力強化にもつながるテーマですので、グリーンITの一技術として研究に力を入れる方向もあるでしょう。
ユビキタスネットの総発電量を、簡単に見積もってみましょう。
「第3期科学技術基本計画」の政策目標には、
2010年までに、100億個以上の端末(電子タグ・センサー・情報家電等)の協調制御により、誰もが安心して利用できるユビキタスネット環境を実現する。 |
とあります。
出典:内閣府HP http://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu/jyoho/3kai/siryo3-1.pdf
端末1個あたりに必要な電力を、平均10mWとすると、端末100億個の年間消費電力は、90億kWhとなります。
一方、太陽光、風力、地熱などの新エネルギーは、2015年度においても100億kWh程度と予想されています。
塵も積もれば山となる、とは、このことです。
さらに、グローバル展開や、センサーネットを活用した省エネルギー(例えば、空調や電灯の自動制御など)まで考慮に入れると、エネルギー・ハーベスティング技術の発展が省エネルギー・地球環境問題に与えるインパクトはばかになりません。
調査報告書では、最後に、事業化及び日本発グローバル展開に向けた政策支援の枠組みのイメージを整理しています。
このような政策支援が、わが国で実現するかどうかは分かりませんが、少なくとも、欧米諸国では、今後ともエネルギー・ハーベスティング技術に関する研究開発が進むでしょう。
そして、ユビキタスネット社会の発展と、地球温暖化問題の深刻化とともに、エネルギー・ハーベスティング技術の市場がグローバルに拡大していくと思われます。
日本は、その流れに乗れるでしょうか?
| この調査研究は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 |