データリソース社では、平成19年度、財団法人機械振興協会経済研究所からの委託により、「日本発グローバル発信型ユビキタスネット向エネルギー変換デバイス調査」を実施しました。調査内容の詳細については、データリソース社にお問い合わせ下さい。
エネルギー・ハーベスティング技術の研究・製品化動向
周りの環境からエネルギーを収穫(ハーベスト)して、電力に変換する「エネルギー・ハーベスティング技術」には、どのようなものがあるでしょうか。
日本が誇る「エネルギー・ハーベスティング技術」は、電池不要の腕時計です。自動巻き腕時計は、古くはスイスのローレックス社の「パーぺクチュアル」(1931年開発)が有名ですが、日本のセイコーやシチズンも、太陽電池を組み込んだもの、熱電素子を組み込んで体温と外気の温度差で発電するもの、振動発電機を組み込んだものなどを、相次いで商品化しました。
出典:セイコーウォッチ株式会社HP
http://www.seiko-watch.co.jp/technology/quarts/kinetic/index.html
また、日立のミューチップなどのパッシブ型RF-IDは、無線のエネルギーを電力に変換するので、電池が不要です。
このように見ていくと、日本が進んでいるようですが、実際は、海外での研究の方が盛んです。2000年から2007年6月までに発表された研究論文のうち、エネルギー・ハーベスティング(Energy Harvesting)あるいは同じ意味のエネルギー・スカベンジング(Energy Scavenging)というキーワードを含む論文数を、下のグラフに示します。
2005年以降、論文数が急増していることが分かります。このほとんどは海外の研究者が発表したものです。エネルギー・ハーベスティングの研究がブーム化しており、日本はそれに乗り遅れている状況です。
出典:「ユビキタスネット向エネルギー変換デバイスにおけるわが国技術の有望性」
米国では、軍事技術のひとつとして、国防高等研究計画局(DARPA)などで、エネルギー・ハーベスティング技術が研究されてきました。戦場で、兵士が使う無線機器などへの電力供給を行うためです。既に2000年時点で、多くの研究成果が報告されており、製品化するベンチャー企業も多数現われました。
また、近年、自然エネルギー普及に力を入れる欧州では、エネルギー・ハーベスティングに関する大規模な政府支援プロジェクトが実施され、ベンチャー企業も多数生まれています。
ごく一部を紹介しますと、、、
- Powercast社(米国)は、送信機から90cmまで届く無線給電システムを開発しました。
- MIT(米国)は、磁場共鳴により、2m離れた地点の60Wの電球を点灯するデモを行いました。
- Perpetuum社(英国)は、電磁誘導による振動発電機を市販しており、MEMS発電機を開発中です。
- Mide 社やAdvanced Ceramics社(共に米国)は、セラミックスの圧電素子を利用した柔らかい圧電発電モジュールを開発・販売しています。
- EnOcean社(ドイツ)は、スイッチを押す力で発電して無線通信を行う、無電源のリモートスイッチを販売しています。
- Power Chip社(ジブラルタル)とENECO社(米国)は、画期的な発電効率を実現する熱イオン発電デバイスを開発中です。
また、最近は、単体の発電デバイスの開発から、蓄電デバイス、変圧回路、無線モジュール、センサーなどを統合したシステムの開発に重点が移りつつあります。
- Advanced Linear Devices社(米国)のEH300モジュールは、0.0Vから昇圧できます。0.0Vから±500VのランダムなAC/DC電力をコンデンサに蓄積し、3.3Vまたは5Vで出力します。
- Green Peak Technologies社(米国)のLime Moduleは、5cm2の大きさに、送受信回路、アンテナ、メッシュネットワークソフトウェア、パワーマネジメント回路が組み込まれており、太陽電池や圧電素子からの電力を利用してZigbeeで250kbpsの通信を行います。1ホップの伝送距離は室内40-100m、屋外160-400m、見通しで1000mです。
出典:各社HP
これら海外の動きと比較すると、最近のわが国での製品化・事業化の動きは、かなり遅れていると言わざるを得ません。
次回は、国内の動向と今後の課題について解説します。
| この調査研究は、競輪の補助金を受けて実施したものです。 |