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  グーグル・ギアでますます存在価値が増すEeePC  (IT アナリスト 新井 研氏)
2008年4月5日号

概説
 話題のEeePCを購入した。超小型軽量で限られた性能だが、充分使えるし価格面を考えると非常に満足度が高い。ここに来てタイミングよくグーグルが「グーグル・ギア」といった新しいソフトウエア・サービスをアナウンスしたが、このような超小型PCには実にうってつけのサービスであり、両者は互いに相乗効果を生み出す可能性が高い。

■ 人気のWinXP新型パソコン
 昨年秋から台湾のASUSTeK Computer社が超小型ノートPC 、EeePCを海外で発売し人気を呼んでいる。今年1月からは日本向け製品が発売された。「Easy to Learn」「Easy to Work」「Easy to Play」の3つの「Easy」から取ったEeePCである。海外ではLinuix搭載で300ドルだが、日本ではWindowsXP搭載と4GBの SDHC(SDメモリの大容量規格、最大16GBまで拡張できる)付きで4万円台後半とあって、発売直後から品不足となり、ここに来てようやく入手できるようになった。
 920グラムの軽さで7インチ・ディスプレイ、CPUはインテル・モバイル・セレロン900MHz、ハードディスクの代わりに4GBの内部フラッシュメモリ(WindowsXPを展開するCドライブに相当)と4GBの外部SDHC(Dドライブに相当)で合計8GBのディスク・スペースだ。無線LANも付き、YouTubeの動画も快適に動いてくれるし、電子メールやインターネット、ワード、エクセル程度なら十分快適に動作する。海外モデルは日本モデルより安いがLinuxが標準搭載で、日本だけWindowsXPと4GB SDHCがついている。マイクロソフトがLinuxの普及阻止に一役買った可能性が高い。4万円台半ばと最近の高機能型の携帯電話と変わらない価格帯とあって、価格.COMの4月1日付け売り上げランキングでは3位の人気ぶりだ。

■ オフラインでも使えるグーグル・ギア
 とはいえ、このEeePCの8GBのディスク・スペースはWindowsXPに加え、ウイルスソフトやアクロバットなどを入れるとあっという間に逼迫してくる。マイクロソフトのOfficeも入れたいところだが、300MBも消費してしまい、後が不安だ。SDHCを増やしてもいいが、コストの上乗せは低価格のメリットが薄れる。
 そこで注目したいのがグーグル・ドキュメントのようなWeb上のOffice系アプリケーションの活用である。シンクライアントのような使い方ができるのでこのような限られた性能のPCにはうってつけのサービスである。とはいえ、グーグル・ドキュメントはネットが使えない環境ではまったく使い物にならない。920グラムPCのメリットはモバイル環境でこそ生かしたいが、筆者のように地下鉄での利用機会が多いと電波が途切れ途切れになり、結局グーグル・ドキュメントも使えなくなる。
 さて、そこでグーグル・ギアである。これは最近グーグルから発表されたWebブラウザのオフライン拡張機能である。これまでのグーグル・ドキュメントはアプリケーションもユーザーのデータもすべてがWeb上、正確にはグーグルのサーバー上に置かれる。ご存知の方も多いと思われるが、グーグルはこれらのユーザーデータを解析することでマーケティングに生かし、利用者には無料の広告モデルを実現している。決してソフトウエアをただで使わせているわけではない。
 グーグル・ギアはネットが使えない環境になっても、使い始めのときさえネットにアクセスしていれば途中で接続が切断されても使い続けられる。その理由は、本来グーグルのサーバー上に置かれるユーザーのワークエリアを、ローカルのユーザーのディスクの一部に仮置きさせるためである。ユーザーがオフライン時に作業したデータや関連情報は次にネットに接続したときに回収されるからグーグルは従来どおりユーザー情報は手に入れている。利用者からみれば、PCを使っていないときにはソフトはディスク上に存在しないため、限られたディスクスペースのPCに向いている。

■ EeePCが触発するグーグル・ギア
 EeePCをいざ使ってみると、画面が小さいため目が疲れてしまい、長時間使う代物ではないことがわかる。しかし、いつも鞄に入れておき、使いたいときにさっと使えるセカンドマシン(2台目マシン)としては最高である。かといってセカンドマシンに高額なソフトウエア・ライセンスを費やすのもどうかと考えている人々にとって、グーグル・ギアのような無料のサービスはまさにうってつけである。マイクロソフトが日本でLinux阻止のためにWindowsXPを戦略的な価格で投入したまではよかったが、利用者はセカンドマシンとしてコストをかけずに、このようなサービス利用を触発するのは避けられそうに無い。結局、グーグル・モデルを利することになるのではないだろうか。いずれにしても、台湾から来たEeePCは充分今年の台風の目になりそうだ。



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