DRI テレコムウォッチャー  from USA

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AT&TがAloha Partnersの700 MHz帯を購入 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.41)
2007年10月25日号

 アナログ停波により空く,700 MHzの競売は2008年1月に開始の予定だが,AT&Tは一足先に全米の人口の75%をカバーする規模の700 MHz帯域を25億ドルで購入した。この281マーケットに於ける12 MHzの帯域はAloha Partnersが2001年,2003年の競売に加え,その後の買収で得た物である。Aloha PartnersはケーブルTV分野のベテランを含む投資家で構成され,この帯域を使い,Hiwireと呼ばれるモバイルTVサービスを計画していた。AT&Tの買収は,帯域に含め,このHiwire部門を含み,HiwireがT Mobile USAとの共同で計画していた,ラスベガスでの24チャンネルのモバイルTVのテストはAT&Tが引き継いで行うことになる。

 しかし,AT&Tが単にモバイル放送の為にこの帯域を買収したとは考えにくい。AT&Tは今年の初めに,MediaFLOとそのサービスを使う契約を行っている。AT&Tがこの契約を破棄し,独自にサービスを提供する可能性もある。しかし,その為に25億ドルの投資はリスクが高い。アメリカでもデジタル地上波放送を使ってのモバイル向け放送が規格化され始めている。現在,デジタル放送規格を取りまとめているATSC(Advanced Television Systems Committee)ではモバイル/ハンドヘルド向けの放送規格の標準化作業を急ピッチで進めている。ATSCはLG/Harris,Samsung/Rohde & Schwarz,MediaFLO,Nokia等を含む,10社からのプロポーザルを検討しており,2008年中に標準規格を設立する予定である。モバイルTVに対する興味は高いが,地上波デジタル放送を使ったモバイル向け放送,MediaFLOに加え,さらにAT&Tが参入し,25億ドル,プラスの投資を回収出来るほどの市場性があるとは考えにくい。

 モバイルTV放送も行うかも知れないが,AT&Tはこの帯域をブロードバンドサービスに使うと考える方が妥当であろう。AT&TのU-verse TVによる多チャンネルサービスの参入は遅れており,その加速化の為にAT&Tはデジタル衛星放送サービスのEchoStarを買収する事を検討しているとの噂が出ている。デジタル衛星放送の弱点は双方向性が無いことであるが,これにAT&Tが得る700 MHz帯によるブロードバンドを加える事で,この弱みを補うことが出来さらに,モバイルビデオのオプションも加える事が可能になる。

 AT&Tがいかにこの帯域を使うかの予測は難しいが,この買収により,1月に予定されている700 MHz帯域の競売がこれまで以上に大きな話題になっていくことは確実である。AT&TがAloha Partnersから購入するライセンスはトップ10市場を含み,トップ100市場の内,72を含む。AT&Tは競売で大きな買い物をしなくても,ほぼ全米をカバーする規模の700 MHz帯を持つ事が可能になる。Verizon等はこれに対抗するネットワークを考えるのであれば,積極的に1月の競売で帯域に入札をしなければならない。オープンアクセスのネットワークの為に入札を検討しているGoogleに取っても,AT&Tが先に人口75%をカバーするライセンスを得てしまった事は大きなインパクトである。さらに,もしも本当にAT&Tがデジタル衛星サービスとモバイルビデオの融合を考えているとなるとComcast等の大手MSOも無線ライセンスの入手により積極的にならざるを得ない。


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