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衛星ラジオのシリウスとXMの合併 
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.33)
2007年2月25日号

 国土の広いアメリカでは長距離を運転する機会が多いが,ラジオを聞いていると頻繁に局を探さなければならない。この問題を解決するのが衛星によるラジオ放送である。衛星ラジオの事業者はSiriusとXM Radioの2つがある。衛星ラジオ向けの周波数帯域は1997年に競売され,サービスは2001年に開始した。XM,Sirius共に百数十のチャンネルを月額約13ドルで提供されている。

 衛星ラジオは自動車会社とタイアップする事で普及をし始めた。XMラジオはGM,ホンダ等と手を組み,Siriusはフォード,クライスラー,BMW等と契約している。最近では,自動車だけでなく,家庭向け,パーソナル向けの衛星ラジオレシーバも出ている。最初の時点では,衛星ラジオの加入者数は伸び悩んでいたが,ここ数年で大きくと成長し,加入者数は2006年末で1350万に達した。この成長を支えているのは独自のコンテンツである。Siriusは有名なジョッキーのハワード・スターンをCBSから引き抜き,XMは野球のメージャーリーグと中継の契約をしている。衛星ラジオで無ければ聴けないコンテンツを提供する事で,加入者数を伸ばす事が出来たが,そのコストは膨大になっている。加入者が伸びる事でXM,Siriusの売上げは順調に増えている。XMの2006年第3四半期の売上げは2.4億ドルで,同期のSiriusの売上げは1.7億ドルであった。しかし,共に赤字を出し続けており,2006年第3四半期の赤字はXMが8400万ドル,Siriusが1.6億ドルであった。

 XMとSiriusは合併の交渉を行ってきたが,2007年2月20日に合併の合意に達した事を発表した。合併により,重複する機能を削り,黒字に転向する狙いである。しかし,この合併が実行されるにはFCCと司法省の許可が必要になる。許可,非許可のポイントは衛星ラジオと言うサービスを以下に見るかである。もし,衛星ラジオと言う市場だけで見れば,2つしかない事業者が一緒になることは独占禁止法に触れ,許可はされない。しかし,市場を広く見れば,アナログラジオ,デジタルラジオ,インターネットラジオ,さらにはiPod等のパーソナル・オーディオが競合であり,XM,Siriusが合併しても独占環境にはならない。

 この合併はラジオだけでなく,テレビ業界にもインパクトを与える。もし,XMとSiriusの合併が許可されれば,衛星TVサービスのDirecTVとEchoStarの合併の可能性が再登場する。DirecTVとEchoStarの合併は4年前に拒否された。しかし,衛星TVサービスを多チャンネルサービス全体で見た場合,1つの強い事業者になることはケーブルTVサービスに対するより大きな競合になる,さらに,電話事業者のビデオサービスの参入により,競合の幅は増えており,この合併に対するハードルは低くなっており,合併の噂が再度出ている。XMとSiriusの合併が許可されることで,DirecTVとEchoStarの合併も進む可能性がある。

 もう1つのインパクトはモバイルビデオに対するインパクトである。XM,Sirius共に自動車,あるいはパーソナルデバイス向けのビデオ放送サービスに参入の意志を見せている。これを行うには帯域の確保が必要である。合併により重複するチャンネルを無くすことで,ビデオサービスを提供する容量は確保出来る。モバイルビデオサービスが本格的なスタートを始めようとしている今,自動車メーカーとすでに契約のあるXM/Siriusが参入する事は大きなインパクトを与える。


 データリソースは2006年6月に「アメリカにおけるモバイル向けビデオサービス」を出版しました。
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