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やっと動き始めたSTBの標準化 
(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.32)
2007年1月25日号

 1996年の通信法から10年以上が経ったが,その条項でまだ現実化していないものがある。それはケーブルTVにおけるサービスとユーザ端末のアンバンドリングを目的としたSTBの標準化である。STBはGeneral Instrument(現在はMotorola)とScientific Atlanta(Ciscoの一部)が市場を独占してきた。それぞれ,異なる有料放送のコンテンツを保護するCAS(コンディショナル・アクセス)技術を持ち,GIのヘッドエンド器材を導入すればGIのSTB,SAならSAのSTBと言う構造で,ヘッドエンド器材を提供するこの2社が自動的にSTB市場をも独占した。また,CASが異なる事で,STBの市販も現実的では無かった。自分が住む地域のケーブルシステムに対応するCASのSTBを購入しても,それが引っ越した地域で使える保証は無い。この結果,ケーブルTV事業者がTVサービスと一緒にSTBもレンタル提供するバンドリング形態となった。

 コンシューマにSTB購入の選択を与え,このケーブルTV事業者によるサービスと端末の強制的なバンドリングを無くす事を目的にした条項が1996年通信法に含まれた。STBの市販を可能にするにはSTBの標準化が必要である。しかし,異なるCASがあったのでは標準化は出来ない。その解決法としてFCCは,STBのレシーバ部分とCASを切り離す規制を作った。OpenCableのSTB仕様ではCASはCableCARDと呼ばれるPCMCIAカードで提供される。コンシューマはOpenCable仕様のSTB(あるいはSTB内蔵のテレビ)を購入し,CableCARDは別途ケーブルTV事業者から得る。最初のこの規制の開始は2005年1月で,それ以降はケーブルTV事業者の提供するSTBもCASを切り離したOpenCable仕様で無ければならない。しかし,仕様の開発の遅れ等の理由で,2回延期され,現在では2007年7月1日になっている。

 OpenCable仕様の製品はDCR(Digital Cable Ready)と呼ばれ,2004年に登場した。しかし,この時点での仕様は単方向で,IPG(Interactive Program Guide),VOD等の双方向アプリケーションに対応しない,1カードは1チューナにしか対応出来ず、ダブルチューナには2枚のCableCARDが必要である等,未熟なものであった。現在,双方向に対応するCableCARD 2.0,それに1枚のカードで複数のチューナをサポート出来るM(Multi Stream)タイプのCableCARDが開発されている。

 しかし,CableCARD 2.0は標準仕様にはなっていない。家電ベンダーを代表するCEAはCableCARD 2.0の認証を渋っている。CableCARD 2.0ではインタラクティブなアプリケーションを走らせるためにミドルウェアのOCAP(OpenCable Application Platform)を走らせることが義務付けられる。CEAはVOD程度の簡単なVODにOCAPは不要であり,OCAPを標準仕様から外すことを求めている。

 ケーブルTV事業者もCableCARD仕様を嫌っている。別途,PCMCIAカードを必要とするCableCARD規格はハードウェア,サポート,管理等のコストを上げ,ケーブルTVサービスの値上げになるとして,CASをソフトウェアベースでダウンロード提供出来るDCAS(Downloadable CAS)を開発しており,その製品化が出来るまでCASの分離規制を延長することを求めている。

 この様に状況はまだ混沌としているが,STBの標準化はやっと本格的な動きを見せている。FCCはComcastが提出した,ローエンドのSTBに対するOpenCable仕様導入の延期の申請を却下し,現時点では,2007年7月の期日を延期する態度は見せていない。また,注目されるOpenCable仕様の製品も登場している。その1つはTiVoのSeries 3である。Series 3はOpenCable仕様のダブルチューナのTiVoである。これまでのSeries 2はデジタルケーブル対応では無かったので,ケーブルTVの番組を録画するには別途,STBを接続する必要があったが,Series 3はSTB無しで,2つのケーブルTVのチャンネルを同時録画,あるいは1つのチャンネルを見ながら裏チャンネルを録画出来る。さらに,マルチルームに対応等高機能のSTBのMoxiを開発してきたDigeo社もOpenCable仕様のMoxiを家電店で市販する事を2007年CESで発表した。

 また,ケーブルTV事業者もOCAPの採用に積極的になっている。これまで異なる仕様のSTBが普及していたので,双方向アプリケーションの開発は容易ではなかった。OCAPが標準になる事で,インタラクティブアプリケーションの開発が簡単になり,サードパーティのアプリケーションも登場してくる。OCAPはCEAの規格にはなっていないので,対応製品は少ないが,Samsung,LG,Panasonicから出ている。Time Warner Cableはそのニューヨーク市のシステムでOCAP対応のSamsung製のDCR製品,HL-S5686C DLP HDTVとSMT-H3050 HD STBのサポートを正式に開始した。IPGにはTWCが開発した物が使われている。Cox,ComcastもOCAPのテストを行っている。CoxもSamsung製のOCAP対応のHDTVとSTBを使ったテストをフロリダのゲインズビルで開始しており,ComcastはPanasonicのOCAP対応のHDTVを使ってのテストを行う。ComcastとCoxのOCAPのIPGにはComcastとGemstar-TV Guideのジョイントベンチャー,GuideWorks LLCが開発しているものが使われる。


 データリソースは2006年6月に「アメリカにおけるモバイル向けビデオサービス」を出版しました。
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