DRI テレコムウォッチャー  from USA

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マルチルームDVR (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.29)
2006年10月25日号

 アメリカではDVRは消費者が家電店で購入するものではなく,デジタルケーブルTV等の多チャンネルサービスのオプションとして受けるのが通常になっている。視聴者は多チャンネルサービス事業者にサービスを申し込むとSTBがHDD内蔵のものにリプレースされ,DVRサービスとして6ドルから10ドル程度の月額料金が加わる。TiVoにしてもその64%の加入者はDirecTVが提供する,STBに内蔵されたタイプの利用者である。

 スタンドアロンとして成功しなかったが,多チャンネルサービスのオプションとして提供されることで,DVRの敷居は低くなり,急成長している。DVRは2005年末でアメリカのTV視聴の世帯の10%に普及し,2006年末には20%に近づくと予想されている。

 DVRの普及により,新たな需要が登場している。それは1つのレコーダーに録画した番組をどの部屋のテレビからでも視聴する事が可能になるマルチルーム(あるいはホールハウス)DVRである。マルチルームDVRには幾つかの種類がある。最もシンプルなのはEchoStarが提供している製品で,基本的にはダブルチューナのDVRで2つのアナログ出力を持っている。2台目のテレビの接続は同軸ケーブルで,UHFチャンネルが使われている。リモコンもUFH帯域を使った物で,別の部屋からDVRの操作が出来る。簡単なソリューションであるが,2つ以上のテレビをつなぐことは不可能であり,また,2つ目のテレビへの画質は落ちる。

 DigeoのMoxi Media CenterもダブルチューナのDVRであり,2つのテレビを同時にサポートする事が出来る。Moxiから2台目のTVへの出力は同軸ケーブル上のIP伝送で,画質の劣化は無く,また,ホームネットワークにつなぎ,PC上の音楽ファイル,画像の再生を行うことも出来る。しかし,2台目のテレビには専用のMoxi Mateと呼ばれる$79の端末が必要になる。MoxiはCharter Communications等のケーブルTV事業者が採用している。

 より多くのテレビをサポート出来る製品としてはScientific AtlantaのマルチルームDVRがある。同社のソリューションは2台目以降のテレビには通常のSTBを使い,マルチルームDVRとSTB間の伝送にはデジタル放送(QAM)を採用している。チューナ機能はそれぞれのSTBが提供するので,DVR自体はダブルチューナは1台目のテレビと裏番組録画専用であり,最大で4台のテレビがサポートされる。しかし,伝送方式はQAMであるため,ホームネットワークにつなぎ,音楽等をシェアする事は出来ない。SAのマルチルームDVRはTime Warnerが採用している。

 現在,EchoStarが積極的にマルチルームDVRを提供しているが,ケーブル事業者は積極的では無い。CharterもTime WarnerもマルチルームDVRをサポートしている地域は限られおり,また,大きく宣伝はしていない。Comcastは次世代STBとしてMoCA機能を持つDVRをPanasonicから購入をする契約をしているが,まだ提供は始まっていない。ケーブルTV事業者が積極的になっていない理由はまだ需要が一部のハイエンド世帯であり,設置とサポートが複雑化するからである。EchoStarのアナログ方式以外では配線が複雑化する。配線自体は同軸ケーブルであるが,伝送が双方向になるため,スプリッターの交換が必要になり,また,高周波数になるので,ケーブルも交換する必要性もある。伝送がIPで,ホームネットワークと接続する場合,サービスを導入するエンジニアに新たにIPネットワークの技術を教える必要が生まれる。また,DVR自体が比較的に新しい技術であり,低サポートの製品にはなっていない時点で,1つのDVRを複数の部屋のテレビから操作し,番組を複数のテレビに送り,さらにはホームネットワークとつなぐことはサポート上の悪夢になりかねない。

 しかし,ケーブルTV,DBSから視聴者を奪う必要のある電話事業者はハイエンドのマルチルームDVRを積極的に提供し始めている。Verizonは9月からMotorolaのマルチルームDVRの提供を始めた。Motorolaの製品はScientific Atlanta同様に2台目のテレビにSTBを接続するが,伝送は同軸ケーブル上のIPで行われる。Verizonの通常のDVRサービスは13ドルであり,マルチルームではそれが20ドルに値上がる。さらに,2台目以降のSTBの料金として,1台あたり4ドルが加わるので,3台のテレビでのマルチルーム化の月額料金は28ドルになる。

 マルチルームDVRはまだハイエンドのオプションであるが,DVRがさらに普及する事で,徐々に主要なサービスになっていくであろう。Park Associates はマルチルームDVRは2010年にはテレビ視聴世帯の16%に普及するとの予測を発表している。



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