8月に開始されるAdvanced Wireless Services帯域の競売

　2006年8月9日からFCCは久しぶりの大きな周波数帯域の競売を開始する。競売はAdvanced Wireless Services（AWS）と名付けられ，1710〜1755と2110〜2155 MHz，合計90 MHzの帯域が対象となる。2003年にFCCが次世代無線サービスの為に政府向けに割り当ていられたこの帯域を解放する事を決定し，12の利用政府機関は9億ドル以上の経費をかけこの帯域を空けた。8月9日からの競売で提供される帯域は下記の通りである。

ブロック	帯域	容量	地域	ライセンス数
A	1710-1720と2110-2120 MHz	10MHz x 2	CMA	734
B	1720-1730と2120-2130 MHz	10MHz x 2	EA	176
C	1730-1735と2130-2135 MHz	5MHz x 2	EA	176
D	1735-1740と2135-2140 MHz	5MHz x 2	REAG	12
E	1740-1745と2140-2145 MHz	5MHz x 2	REAG	12
F	1745-1755と2145-2155 MHz	10MHz x 2	REAG	12
CMA = Cellular Market Area（734の携帯電話市場地域） EA = Economic Area（176に分けられた経済的地域） REAG = Regional Economic Area Grouping（アメリカをNortheast，Southeast，Great Lakes，Mississippi Valley，Central，West，Alaska，Hawaii，GuamとNorthern Mariana Islands，Puerto RicoとU.S. Virgin Islands，American Samoa，それにGulf of Mexicoの12に分けた物）

　このAWS帯域は携帯電話で使われているブロードバンドPCS帯域（1850〜1910MHzと1930〜1990MHz）の上下にあり，携帯電話の地域拡大，容量拡大に適した物である。大手携帯電話事業者の内，T-Mobileはその地域拡大を最も必要としており，この競売では積極的に入札をする物と思われる。当然，VerizonとVodafonのジョイントベンチャーのVerizon Wireless，それにAT&TとBellSouthのジョイントベンチャーのCingular，それにSprintも競売に参加する。T-Mobileは特に，ニューヨーク市の帯域を必要としており，他にもニューヨーク市を狙っている事業者が存在する事から，激しい競争の地域になり，ニューヨーク市だけで全競売金額の半分に達する程の激戦になるとの予想もある。この他，数多くの携帯電話事業者が参加しているが，大手4社以外は値段の安い農村地域中心に狙ってくる。

　競売に参加するのは携帯電話事業者だけではない。Sprintは独自では無く，そのケーブルTV事業者（Comcast，Time Warner Cable，Cox，Advance/Newhouse）とのジョイントベンチャー，SpectrumCo LLCとして競売に参加する。SprintとMSO4社はモバイルサービスとビデオサービスを融合する新規サービスを提供するジョイントベンチャーを設立し，20億ドルの投資を行う事を発表している。このジョイントベンチャーに参加していない大手MSOのCablevisonは独自で競売に参加する。Cablevisionはニューヨークを中心にケーブルTVサービスを提供しており，当然に狙いはニューヨーク主体になると思われる。

　MSOだけでなく，衛星TV事業者のDirecTVとEchoStarも共同でこの競売に参加する。DirecTVとEchoStarはMSOと競合する為にWiMAXを使い，双方向サービス，さらにはモバイルビデオサービスの提供を行う計画を発表している。DirecTVはこのために10億ドルの投資を行う事も発表している。

　DirecTV，EchoStar以外でも多くの会社がAWSをWiMAXを提供する為の帯域として狙っており，BPL（Broadband Power Line）事業者のCurrent Group，EarthlinkとSK Telecomの共同のSKT，NexrWave Telecom創立者のAWS Wireless等の会社が参加をする。

　AWSの総額は80億ドルから150億ドルになると予想されている。

データリソースは2006年6月に「アメリカにおけるモバイル向けビデオサービス」を出版しました。 　詳細は、データリソースまでお問合せください。（電話：03-3582-2531、Eメール：info@dri.co.jp）