“小は大を兼ねる”WindowsSideShowとガジェット (IT アナリスト 新井 研氏)
2006年12月1日号
概説
WindowsVistaの発売がようやく1ヵ月後に迫り、そろそろ騒がしくなってきた。WindowsVistaには様々な機能があるが、これまでのノートPCの使い方を一変させるような機能が備わっている。WindowsSideShowという機能だが、特にノートPCユーザーの多い日本では注目しておいたほうが良い機能である。
■ iPodと“親戚”になるVistaノート
WindowsSideShow(以下SideShow)は、ノートPCのディスプレイの蓋側に、携帯電話の画面くらいのサブ・ディスプレイを埋め込んで、ノートPC本体を起動させなくとも、折りたたんだまま、電卓、メールの閲覧、パワーポイント・スクリーンの表示など、ちょっとした作業ならこのサブ・システムでやってしまおうという技術だ。操作はサブディスプレイの脇に小さなマウスボールなどを組み込んで行うようになる。
もちろん、ノートPCのハードウエア側がこの仕様のPCを作らなければならないが、WindowsVista(以下Vista)側はこの機能を標準的に対応するようになる。このSideShowをマイクロソフトと共同開発したのは、米国のPortal Player社。iPodの心臓とも言えるオーディオ処理用LSIを提供している企業であり、SideShowではそこで培われた技術が投入されることになる。SideShowは、320×240ドット・ディスプレイ、32MバイトDRAM,1Gバイトのフラッシュ・メモリ、USBインタフェースを備えたちょっとしたコンピュータといえ、あるいは1Gバイトの容量のiPodのようなものともいえる。つまりVistaノートはiPodとかなり深い“親戚関係”になるようなものである。
PC本体とはUSBインターフェイスで情報をやり取りするが、USBだけに取り外して使うようにすることもできる。小さなバッテリを組み込んでやれば、まさにiPodのように携帯音楽プレーヤーとして機能する。
■ ガジェットで様々な“ちょっとした作業”
SideShowを動かすのは32Mバイトの領域で展開されるガジェットという小さなプログラムである。マイクロソフトではこのプログラムのAPIを公開して、ユーザーから応募を行っているが、ダウンロード数やユーザーからの評価なども同時に公開され、Web2.0的な展開を行っている。11月末で514本のガジェットが登録され自由にダウンロードできる。公開されているガジェットには、電卓、天気予報、動画ブラウザ(YouTubeが見れる)、ネットラジオ、Wikipedia用ブラウザ、グーグルバー、OutlookInfo(PCのOutlookからメールや予定表がみれる)、RSSリーダー、様々なゲームと、ほとんどPCと見まごうほどのアプリケーションが揃っている。面白かったのは、NorCamといってノルウェーの町に設置されたWebカメラの映像をみるガジェットなどがある。それとiTuneまで入っているので、ノートPCをほとんどiPodとしても使うことができる。要するに、ガジェットがあればノートPCを開かなくともちょっとした作業ならできるようになる。今後様々なガジェットが増えると考えられることから、かなり広範な用途での“ちょっとした作業”ができるようになる。
■ 改めて軽薄短小のSideShow
SideShowの良いところは、PCの本体を動作させるわけではないので、非常に低電力で動作できることである。一般のノートPCを立ち上げてMP3音楽を聴くとしよう。32ビットCPUと大容量メモリ、ハードディスク、14インチディスプレイに通電させるため、長くても4,5時間しか持たないだろう。ところが、ノートPCのバッテリでSideShowを音楽を聴くと300時間〜500時間の動作が可能という。このあたりがノートPCをiPodとして使えるというゆえんである。余談になるが、iTuneのラジオサイトで、ピアノ曲を専門に流しているサイトがある。休みの日などはPCをつけっぱなしにして一日中流しておきたいのだが、PCの一日中のつけっぱなしはどうも無駄な電力の消費のような気がする。そこで、SideShowで低消費電力でステレオにつないだほうが電力効率は良くなりそうだ。
これ以外にも、外出先で電子メールのチェックにいちいちノートPCを立ち上げてOutlookのメールをみて、結局「緊急の用事がなくてよかった」と思い、またノートPCを閉じる経験をされている方は多いかと思うが、SideShowがあれば簡単にチェックできて、返事が必要なメールなどであれば改めてノートPC本体を立ち上げればよい。つまり、SideShowとガジェットを駆使することで、ノートPCの使い方が一変するかもしれない。どうやら、“小は大を兼ねる”と言った事態になりそうだ。
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