DRI テレコムウォッチャー  from USA

このシリーズは毎月20日に掲載!!

NSI Research社の
「The Compass」 と 「アメリカのデジタル・ブロードバンド放送産業」(年間情報サービス)
 放送/メディア会社、通信事業者・機器ベンダーを対象としています。


AOLの魅力 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.21)
2005年10月25日号

 America Online(AOL)はドットコムを代表するような会社である。1999年にオンラインサービスをスタートしたAOLはWindowsインタフェース,それにインターネットへのアクセスを素早く取り入れ,オンラインサービス市場で競合のCompuServeを買収し,無敵のISPになった。2001年には映画,音楽,出版,TVネットワーク,ケーブルTV等を持つコンテンツ/メディア業界の大手,Time Warnerを1060億ドルで買収をした。AOLのCEO,スティーブ・ケースがCEOとなり,社名もAOL Time Warnerに変わった。

 しかし,この大成功は長く続かなかった。Time Warner買収後のAOLは不調になった。加入者の伸びは止まり,2001年には1700人のレイオフを行った。ドットコムバブルがはじけることで,AOLの不況はさらに増し,2003年初めにはスティーブ・ケースはCEOから辞職し,さらに数ヶ月後には社名からAOLが落とされ,元のTime Warnerに戻った。インターネットがブロードバンドに進んでいる中,AOLの加入者の多くはダイアルアップであり,時代遅れの代表ともされてきた。

 最近は話題にならないAOLであったが,Time WarnerがAOLへ50億ドル規模に達すであろう投資をする会社を探し始め,その投資家としてComcast,Google,Microsoft,Yahoo!等が名乗りを上げている事で注目をされている。

 近年,AOLは毎年200万の加入者を失っているものの,今でも208万の加入者を持つ米国最大のISPである。これに加え,AOL Access BusinessとしてCompuServe,Netscapeのブランド名でISP事業を行い,さらにWalMartと共同でのISP事業も行っている。加入者は減少しているが,それはブロードバンドに乗り換えている為であれば,Comcast等のブロードバンド事業者には魅力がある。

 しかし,AOLの大きな魅力はISP以外の部分である。AOLは無料サイトとしてポータルのAOL.com,Netscape,地図情報サイトのMapquest,それに電話とウェブで映画情報と映画切符販売を行っているMoviefone等を運営し,合計で月間1.12億近いビジターを持つ。これはYahoo!に続く2位の規模であり,Google,Yahoo!,Microsoft(MSN)等のポータルには大きな魅力である。

 MicrosoftはAOLの検索エンジンとしてGoogleと手を切り,Microsoftへ移行して欲しく,今年の前半からその交渉を始め,投資を申し出ている。Googleとしてはその売上げの11%を構成するAOLのビジネスをつなぎ止める防衛上の理由からも,Comcastと競合でAOLへの投資をオファーしている。

 また,AOLが持つビデオコンテンツに対する関心も強い。AOLは15,000以上のミュージックビデオ,ニュース,ドラマ等のビデオコンテンツを提供している。Google Videoとしてビデオコンテンツの提供を始めたGoogleにはこのライブラリーは魅力的である。Comcastもビデオ・オン・デマンド(VOD)に力を入れており,現在,3800のVODタイトルを持ち,その95%が無料のFOD(Free-on-Demand)で提供されている。ComcastはVODをその最大の武器と考えており,CEOのブライアン・ロバーツは視聴者に大量の検索可能なVODコンテンツを提供し,Comcastはテレビ業界のGoogleになりたいと発言している。

 Yahoo!は急速に成長をしているGoogleがAOLとの関係をこれ以上強める事を恐れている。また,Yahoo!のCEOとCOOであるテリー・セメルは元Warner BrothersのCEO,会長であり,コンテンツプロバイダーとしてのAOLの価値をよく理解しており,Yahoo!のコンテンツ強化のためにAOLを求めている。

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