電話事業社のVerizonがついにそのFTTHネットワークのFiOS上でビデオサービスを開始したが,同社は通常のデジタルケーブルと同様にRFをオーバーレイして,伝送にはQAMを使っており,IPベースではない。IPTVと言うと欧州が主体になっているが,アメリカでもすでにIPベースのビデオサービスも開始されている。その1つはカリフォルニアの州都,サクラメントの郊外で提供されている。サクラメント郊外のRosevilleの電話事業者はSBCではなく,独立系のSureWestである。同社は2002年にCLECのWestern Integrated Networks(WINfirst)を買収し,そのFTTHネットワークで電話,データ,ビデオのトリプルプレーを行ってきた。しかし,従来の自社のネットワークは通常の電話回線であり,その地域では電話とADSLのサービスしか提供していなかった。自社のネットワークをFTTHにリプレースする費用は多額であり,SureWestは自社のネットワークではDSL上でビデオサービスを行う戦略を立てた。
SureWestは2004年6月にそのシトラスハイツのネットワークのアップデートを完了させ,ADSL2+上でのIPベースのビデオサービスを開始した。このビデオサービスにはCisco,Minerva Network(ミドルウェア),Kasenna(VOD),それにAmino(STB)等の技術が採用されている。
これ以外にオクラホマではPioneer Telephone Cooperative,ジョージアではRinggold TelephoneがIPTVサービスを行っており,他にサウスカロライナのFramers Telephone Cooperative,Iowa Network Services,Comporium Communications,UTOPIA(Utah Telecommunication Open Infrastructure Agency)などがIPTV行う計画を発表している。
SureWestのサービスを含め,これらのIPTVは地上波の再送信を含めて,ケーブルTVと同じである。SureWestのIPTVのサービス料金は下記の通りである。
- ベーシック:地域の地上波再送信,教育,公共放送チャンネル等28チャンネルで月額$14.06。
- デジタルチョイス:ベーシックに加え,通常ケーブルTVで放送されているCNN等のネットワーク,合計161チャンネルで$48.72。
- ペイチャンネルのHBO,Cinemax,Showtime等。それぞれ10数ドル。
- PPVとVOD:通常の映画は75セントから$3.95。アダルト物は$11.95。
連邦法のケーブルTVに関する規制にはケーブルTVの技術的要求は無く,IPベースの放送技術をケーブルTVとして除外していない。連邦法ではケーブルTVをTV放送と同等のビデオサービスを複数の加入者に提供する為のクローズされた通信ネットワークと定義しており,その技術は指定していない。既存のケーブルTV事業者が伝送形態をQAMからIPに変えても,それはケーブルTVシステムであり,規制上の扱いが変わる事はない。
FCC規定ではデジタルケーブルシステムはQAM変調を使い1つ以上のチャンネルを提供する物と定義している。この定義ではIPTVはデジタルケーブルでは無くなるが,それ以外の放送技術を排除している訳ではない。FCC規制にはそれ以外の技術を使ったサービスでも公共の利益になる物であればそれを許可するとあり,IPTVがQAMベースでは無いとの理由で地上波再送信が出来ない事は無い。