DRI テレコムウォッチャー  from USA

このシリーズは毎月20日に掲載!!


VoIPの課題
2005年3月20日号

有料のVoIPサービスの利用者は2003年の131,000から2004年には約100万に成長した。2008年には1800万以上の利用者に達するとの予測もある。事業者としてはVonageが最大で,その利用者は2004年末では40万,そして2005年3月に50万に達している。Vonageが提供する既成のブロードバンドサービス上でIP電話を提供するサービスの加入者は全体の約半分の50万世帯であり,Vonageが圧倒的なシェアを持っている。AT&TのCallVantageも著名ではあるが,その利用者数は2004年末で5万世帯でしかなかった。
もう1つのタイプのVoIPサービスは固定回線のVoIPサービスであり,ケーブルTV電話事業者が提供している。ケーブルTV事業者としてニューヨーク,ニュージャージー,コネチカット地域に大規模なクラスターを持つCablevisionが最大で,27万世帯の加入者を持っている。第2位はTime Warner Cableで,20万世帯の利用者がある。
FCCはVoIPに対して,基本的に「Hands-off」の態度を取っている。インターネットベースのサービスに関する米国政府の態度は規制を作るのではなく,自由にさせる事が技術の開発と普及を生み出す物であり,必要のなった時点でいかに既存の規制に対応するかを判断してきている。
これに対して,州の公共事業の規制局はVoIPも他の公共事業と同様に規制をしようとしている。ミネソタ州は2004年後半にVonageに対して,同社のサービスは他の地域電話事業と同じであり,電話事業者として登録し,その規制に従うように求めた。これに対してVonageは訴訟を起こし,法廷は同サービスは電話事業では無く情報サービスであり,州規制の対象外との判定をし,州はVoIPに対して規制も課税も出来ないとした。さらに11月にFCCはVoIPは州間のサービスであり,州当局の規制の対象にはならないとの判断をした。しかし,FCCはVoIPは通信法上で情報サービスであるのか,あるいは電話サービスであるのか,また,州が課税をすることが出来るのかに対する判断は出さなかった。
FCCはインターネット,そのアプリケーションに対して早まった規制をする事はその発展を押さえることになるとの考えであり,FCCの元会長のPowell氏は,VoIPが州の規制の対象にはならないとの判定の際にVoIPを州によって異なる規制制度にさらすことに対しては,インターネットと言う驚くべき技術の基礎的な要素を破壊する事だと発言した。
しかし,電話は非常に生活に身近なサービスであり,これまでのインターネットサービスとは異なり,VoIPに対する規制は見送ることが出来なくなって来る可能性もある。今月,テキサス州はVonageが911(緊急電話番号)が基本サービスで無いことを利用者に明示しなかったとして訴えを起こした。Vonageのサービスを使っている家庭に銃を持った賊が進入し,娘が家の電話から911に通報を試みたが,Vonageのサービスは911通話を通さず,その間に娘の両親が撃たれた。
Vonageは同社のサービスには911機能があり,そのウェブサイトで使い方は明記してあると反論している。しかし,911機能を使うのは利用者は別途登録をする必要がある。Vonageはまた,VoIPのトラフィックを妨害する電話会社があり,911機能が使える状態になっていても通じなくなる可能性があると言っている。
これまでの料金,課税等に関する問題とは異なり,生死に関わる911の問題は大きい。この事件を機にVoIPの規制化を求める声が州議会で高まるであろう。FCCが例えVoIPを情報サービスだと判断しても,それが音声を通し,緊急通話に使われる可能性がある事は変わらない。

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