| モバイルエンターテイメント - 次のデジタル家電市場(ブロードキャスティングレビューシリーズ No.16) |
2005年1月20日号
ソニーのウォークマンは携帯カセットプレーヤの代名詞になるまでに成功をした。しかし,コンテンツ事業者でもあるソニーは既存のCD市場を守ることに対する保護意識があったのか,ポータブルミュージックプレーヤでは引き続き市場を先導することは出来なかった。MDは日本では普及をしたが米国では成功をしなかった。デジタル家電はCE(家電)とITの融合である事を示すように,デジタルのポータブルミュージックプレーヤで大成功を納めたのはコンピュータベンダーのアップルであった。
iPodはデジタル時代のモバイルエンターテイメントデバイスのパイオニアとなっているが,今後主体になるモバイル家電に欠けている機能が1つある。それは外からのコンテンツを得る通信機能である。自動車向けの衛星ラジオサービスを提供しているXMは携帯可能なレシーバを2004年12月に発表した。衛星ラジオは自動車で移動中に受信可能であるが,携帯端末での受信はこれまでは不可能であった。このDephi社のMyFiと呼ばれる349ドルのデバイスはアンテナ内蔵の小型レシーバであり,歩きながらXMの衛星放送を受信する事が出来る。MyFiはXM放送を受信しリアルタイムで聞く以外に,内蔵されたメモリーに聞きたい番組を蓄積し,後で聞くことも出来る。5時間分の音楽,あるいは11時間分のトーク番組を録音する出来る。電池はXMの放送を受信している状態で5時間,メモリーからの再生時は9時間もつ。
通信はデジタル家電の重要な要素であり,モバイル通信デバイスである携帯電話がエンターテイメントデバイスとして名乗りをあげても不思議ではない。その動きとして携帯電話向けのテレビ放送がある。アメリカのデジタルTV放送の規格であるATSCはVSB変調を使っている。VSBはマルチパスに弱く,比較的に大きなアンテナを必要とし,モバイル環境での受信は困難である。携帯電話向けの放送サービスを提供するには新しい帯域が必要とされる。無線通信,放送のアンテナ設備を通信,放送事業者に貸すサービスを提供しているCrown Castleは2003年4月にFCCの競売で全米における1670~1675 MHz間の5 MHzの帯域のライセンスを1260万ドルで得ている。2004年9月のInternational Broadcast Convention(IBC)でCrown Castleはこの帯域を使い,DVB-Hの技術を使ったモバイル端末向けのビデオ放送を提供する計画を発表している。Crown Castleはピッツバーグにおいて3サイト,単独周波数の小規模なDVB-HのテストをNokiaとDiBcomの協力で行っている。
Crown Castle以外では,Qualcommが2003年6月のFCC競売で700 MHzのライセンスを得ている。これはUHFの55チャンネルで使われている帯域である。2004年11月にQualcommはこの帯域を使い,放送サービスを提供する子会社MediaFLO USA Inc.を設立し,ビデオサービスをCDMA2000,あるいはWCDMAを採用しているオペレータ向けに提供する事を発表している。700 MHzのライセンスは競売されたがまだアナログ放送で使われているため,この帯域を使う局がアナログ放送が終了するまで使うことは出来ない。
モバイルエンターテイメントとして自動車向け市場を無視することは出来ない。XMは250万,Siriusは100万以上の加入者を持ち,デジタル衛星ラジオ放送は自動車向けのサービスとして定着し始めている。また,リアシートエンターテイメントシステムと呼ばれる後部座席向けのDVDビデオシステムの販売も伸びている。リアシート向けに対するビデオ放送に対する関心も強い。既存のデジタル放送を動いている自動車で受信することは難しいが,RaySat Mobile Antennasは自動車の屋根に取り付け,走行中にデジタル衛星テレビ放送を受信する事の出来るアンテナを販売している。また,Siriusはそのデジタルラジオ放送の衛星を使い,ビデオサービスを加えることを1月に発表した。放送にはMicrosoftのWindows Media 9を使い,サービスは2006年後半に開始の予定。車の後部座席に座る事の多い子供達を狙い,3つの子供向けコンテンツを放送する予定である。
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