今月のMarket Snapshotでは、米国のホームネットワーキング市場をテーマに3回に分けてお話をしたい。Microsoftを筆頭にDellやGatewayなど昨今のPCメーカ各社は、本来のPC生産に加え、ホームネットワーキング分野にも積極的に取組んでいる。今年初頭にラスベガス(ネバダ州)で開催されたConsumer Electronics Show(以下CES)では、保守派とされるHPでも最新のデジタルカメラをはじめテレビ、iPodなど幅広い製品ラインを発表した。
PCメーカは標準化によって開発作業を促進する一方、顧客・保守サービスを充実させることで量産と差別化に努めてきた。その結果、価格の低下と簡素な導入技術の発達により、90年代中盤以降はPCの売上が大幅に伸びたのである。同時に、家庭内に設置した複数のPC間でブロードバンド接続サービスを共有するなど合理的なニーズに特化しながら、データネットワークも急速な成長を遂げた。このようにPC価格の引き下げ、ブロードバンド接続技術の高い普及率、各種家電製品のデジタル化、無線ネットワーキング敷設作業の簡易化が特に若い世代を中心にエンターテインメント分野への関心を大きく惹いた。米国人のPC利用目的はビデオゲームをトップに音楽鑑賞、CD/DVD制作、デジタル写真の編集、DVDの再生、デジタル写真のスライドショー制作、テレビの視聴、ビデオ編集、テレビ番組録画の順に続いている。また、エンターテインメントの種類や幅が広がるにつれ、コンテンツの活用方法にも変化が出てきた。PC上のコンテンツを家電製品や携帯機器と連動させることで「娯楽の場」が拡大しているのである。
大手PCメーカ各社では、独自の工夫を凝らしたホームネットワーキング対応製品を開発し、2000年あたりから消費市場へと力を入れ始めた。Microsoftを例に取ると、メディアPC(マルチメディアデータの保存・管理機能を標準搭載したコンピュータ)をはじめデジタルエンターテインメント関連製品には、今後200億ドルを投入する計画である。現在、米国内ではインターネット加入世帯の約半数がホームネットワーキングに関心を持っており、その導入事例も2003年の1,300万世帯から2009年にはおよそ3,000万世帯に達するとの見込みがある。また、ホームネットワーキングへの需要は、建築様式にも影響を与えている。例えば、米国内で2002年に新築された住宅の42%にはホームネットワーキング敷設用のインフラが整備されており、標準装備となる傾向が見られる(Parks Associatesより:http://www.parksassociates.com/ )。
来月号の記事では、ホームネットワーキング製品開発に特化したベンチャー企業数社の紹介と各種製品の利用状況について触れる 。
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