DRI テレコムウォッチャー  from USA

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ホームネットワークの戦い - 第2ラウンド
   - A/Vホームネットワークの勝者は? -
2004年11月20日号

ホームネットワークの第1ラウンド目の戦いはインターネットアクセス共有の利用目的であった。新たな配線を必要とするイーサネット,既存の配線を使うHomePNA等,それに無線のHomeRFとIEEE 802.11bの戦いとなった。オフィス向けのLANでは圧倒的に強いイーサネットも,新たに配線を必要とする事から家庭では成功出来なかった。新しい配線を必要とするNew Wireに対して,No New Wireは家庭にすでにある電話線,電力(電灯)線等を使う。中でも電話線を使うHomePNA(Home Phoneline Networking Alliance)は2000年には10 MbpsのHomePNA 2.0を発表し,電灯線LANよりリードしていた。PCの近くには電話ジャックがある可能性は高く,HomePNAは期待されていた。

配線を全く必要としない無線(No Wire)では,オフィス向けに開発された802.11bと家庭での利用を考慮して作られたHomeRFがあった。無線は便利であるが,高価になることからHomePNAも普及すると予想されていた。しかし,結果は802.11bの圧勝であった。802.11bはオフィスでも普及したことから価格が急速に下がり,HomePNAの価格面での優位性は無くなった。家庭ではHomeRFが健闘するとの予想もあったが,HomeRF製品が出回る前に802.11bは勝敗を決めてしまった。

しかしこれでホームネットワークの戦いが終わった訳ではなく,第2ラウンドが今,始まろうとしている。第2ラウンドはA/Vファイルを転送する為のネットワークでの戦いである。HDDを内蔵した蓄積型STB(DVR機能を持つSTB)の普及で,録画されたビデオを他の部屋で見るニーズが登場している。HD対応の蓄積型STBも登場しており,また1つのDVRが複数のビデオストリームを送ることも可能であり,この様なアプリケーションではかなりのネットワーク性能,特に速度とQoSを必要とする。1つの家庭に2台の蓄積型STB,2台のデジタルSTBがあり,そこで複数のHDビデオの信号を同時に転送する事も十分に考えられる事である。

無線では54 MbpsのIEEE 802.11gがある。しかし,実際の速度はその半分程度で,さらに壁が多くある家庭では速度はさらに悪くなる。100 Mbpsの802.11nが開発されており,320 Mbpsも可能と言われている。しかし,ホームネットワークの要求を満たす物になるかは分からない。

A/Vホームネットワークの要求を満たす有線ネットワークは多くある。しかし,新しい配線の導入が困難な事が多い家庭での環境では,New Wireの普及は短距離に限定されるであろう。そこで,No New Wireの技術が再度クローズアップされている。

HomePNAはバージョン3として128 Mbpsの技術を規格化している。しかし,ホームエンターテイメント製品を置く回りには電話線が無いことも多く,A/Vネットワークとして電話線は問題がある。CE(家電)ベンダーのHomePNAに対する関心は低くく,HomePNAが巻き返す可能性は低いであろう。

家電製品の殆どはコンセントから電力を取っており,コンセントに差し込むことでネットワーク接続も出来る事は大きなメリットであり,電灯線ネットワークへの関心は高い。しかし,14 Mbpsの規格が出来たのは2001年6月であり,ホームネットワークの第1ラウンドには少し遅すぎた。電灯線ネットワークの規格化団体のHomePlug Alliance現在,200 Mbps以上の伝送速度を持つHomePlug AV規格を作っている。規格化は現在最終ステージに入っている。電力線を使ったブロードバンドアクセスの提供もFCCに認められ,電力/電灯線ネットワークは注目されている。

もう1つ,No New Wireとして登場しているのが,テレビの接続に使われている同軸ケーブルである。アメリカの70%の世帯はケーブルTVサービスに加入しており,これらの世帯のテレビは殆ど同軸ケーブルで接続されている。家庭内の既存の配線としてて同軸ケーブルは電灯線,電話線より使われている距離は短いが,同軸ケーブルはA/V機器の主役であるテレビをすでにつないでいる強みがある。

Multimedia Over Coax Alliance(MoCA)は,Entropics,Comcast,EchoStar,Motorola,Panasonic,東芝,RadioShack,Ciscoが設立した団体であり,Entropicsの技術を使った同軸ケーブルHNの規格化を行っている。Entropicはファブレス半導体会社であり,家庭内でアナログビデオの伝送に使われている同軸ケーブルをLANに使い,既存のアナログ信号と共にデジタルマルチメディアデータを送る為のチップセットを開発している。同社のc.LINK (CableLink)は間に分波器が入ったデバイス間でも通信を可能にする事で,既存の家庭内のケーブル線をそのまま使うことが出来る。c.Linkはアナログ帯域のの860 MHzから2000 MHzはそのままに,それ以上の帯域を使い,MoCAの規格では270 Mbps程度の速度を提供する。

第2ラウンドのA/Vホームネットワークの戦いでは第1ラウンドとは異なり,PCベンダーが主役では無い。この戦いにはCEベンダーだけでなく,ケーブルTV,デジタル衛星事業者も影響力を与えており,前回とは違った戦いになる。

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