| インターネットでのVOD
- インターネットを使ったVODのビジネスモデル - |
2004年10月20日号
ブロードバンドアクセスの普及でインターネットを使ったVODのサービスが登場し始めている。現在,PC向けの映画のVODサービスとしてはMovielink,CinemaNow,それにStarz/Realがある。Movielinkは2002年11月に開始されたサービスで,MGM,Paramount,Sony Pictures Entertainment, Universal,それにWarner Brothersの5社が投資している。利用者はMovielinkのウェブサイトから映画を$1.99から$4.99の料金でダウンロードし,見始めてから24時間以内であれば,何回でも見ることが出来る。投資を行った5社だけでなく,Disneyの映画もあり,常に約900の映画がダウンロード可能になっている。
DVDのレンタルはこれまでの1本毎に料金を払うレンタル方式であったが,月額を支払い好きなだけ借りることの出来るサブスクリプション方式も普及を始めている。レンタルDVDを郵送で行っているNetflixはこの方式で成功しており,レンタルチェーンのBlockbusterもサブスクリプション方式のサービスを始めている。
CinemaNowはタイトル毎のレンタルを1本最高で$3.99の価格で提供している他に,サブスクリプションベースのサービスも提供している。プレミアムは月額$9.95で,プレミアム対象の映画を自由に見ることが出来る。プレミアムプラスは月額29.95で対象映画の幅が広がっている。しかし,新しい映画はタイトル毎のレンタルでしか提供されていない。CinemaNowはハリウッド映画だけでなく,独立系,外国,それにアダルト映画を加えており,2000のタイトルを提供している。
これに対して,Starz! Ticket on Real Moviesは100%サブスクリプションベースのサービスで,月額$12.95ドルの料金で自由に映画を見ることが出来る。しかし,1ヶ月に提供されるタイトルは150に限定されている。また,新しい映画が加わる時期もMovielink,CinemaNowに比べて遅い。Starz!/RealはケーブルTVのプレミアムチャンネルの1つ,Starz!とRealが共同で開始したサービスであり,映画のダウンロードに加え,TVで放送されているStarz!のチャンネルをストリーミングで見ることも出来る。
これらサービスの共通の欠点は映画を見るのはPCを使ってであり,テレビからでは見ることが出来ない事である。TVからの視聴を可能にするにはハードウェア(STB)が必要になり,この値段をいかに回収するかが課題である。DisneyのMovieBeamはコンテンツの伝送にインターネットではなく,地上波TV放送でのデータキャストを使ったVODサービスであるが,このサービスではハードウェアは買い取りではなく,レンタルになっている。これにより,値段を下げることは出来るが,利用者はハードウェアの料金を払い続ける必要がある。料金は1年分先払いで$89ドル,あるいは月額$8.99である。これに加えて,映画毎に$1.99から$3.99のレンタル料金が加わる。無料のサービスは無く,ハードウェア他の用途にも使うことは出来ず,映画を借りるだけのために毎月$9ドルは高い金額である。
インターネットを使ったサービスとしてはAkimboがある。Akimboはその80 GBのHD,CeleronプロセッサーベースのAkimbo Playerを229ドルで販売し,さらに毎月,サブスクリプション料として$9.95かかる。基本料金内で見られるコンテンツに加え,有料の「チャンネル」,それのVODのコンテンツも提供される。AkimboはTime WarnerのTurner Broadcasting Service(TBS)部門と契約し,そのCNN,Cartoon Network,TCM,Boomerang等のケーブル向けネットワークのコンテンツを得ているが,AkimboはケーブルTVの代替え市場を狙うのではなく,ケーブルTVでは見ることの出来ないコンテンツを提供する戦略で,ティーン向けのVarsity Television,それにサーフィン,スノーボード,スケート等のビデオを持つQuicksilver等と契約をしており,ハリウッド映画のVODを提供する予定は無く,ニッチを狙ったサービスである。
MovieBeam,Akimbo等のビジネスモデルの成功は,利用者に専用のハードウェアの料金を払わせることの出来るほどに魅力あるコンテンツが提供出来るかにかかる。ハードウェア自体は他に応用する事は出来ないため,そのサービスに使う以外は何の価値も無い。
これに対して,PVRのパイオニアと言えるTiVoは既存のタイムシフトのサービスに加えて,TiVoプレーヤでからインターネット経由で映画をダウンロードし,見ることを可能にするVODサービスを2005年から開始する事を予定している。サービスには郵便によりDVDレンタルのサービスを提供しているNetflixが協力をする。TiVoはすでに200万の加入世帯を持っており,ハードウェアはPVRとして魅力ある製品である。VODはその利用価値をさらに高める製品であり,効果的なビジネスモデルであるかも知れない。
しかし,大きな問題はデジタルケーブルTVの加入世帯は2300万世帯あり,それらの殆どはケーブルTVのVODを利用出来る。さらに2200万の世帯はデジタル衛星TVサービスに加入しており,多数のPPVチャンネルにアクセス可能である。同じようなコンテンツ,サービス形態でデジタルケーブルTV,衛星TVに競合するのは困難であろう。
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