DRI テレコムウォッチャー  from USA

このシリーズは毎月20日に掲載!!


E911の現状
   - E911導入の加速に必要な位置ベースサービスの登場 -
2004年9月20日号

1996年にFCC移動体通信キャリアと携帯電話ベンダーに対して,携帯電話からの911緊急番号(日本の110番や119番にあたるもの)への通報の際,通報者の位置を探知し,自動的に緊急応答センターに通知する仕組み,E911(エンハンスド911)の導入を義務付けた。その第一フェーズは911通報を行ったハンドセットの電話番号とそれに最も近い基地局の位置の通知であり,これは1998年末から実施が始まった。

第二フェースではALI(Automatic Location Identifier)と呼ばれるハンドセットの緯度と経緯のデータを緊急センターに自動的に通知する事が求められている。このフェーズの段階的な導入は2001年3月から始まり,2004年末に完了の予定となっている。

位置を判断する技術としては,ハンドセットにGPSを内蔵し,探知した位置情報をハンドセットから送るA-GPS(Assisted GPS)と,複数の基地局のレシーバを使い,特定のハンドセットの位置を信号の到着時間差で判断するTDOA(Time Difference of Arrival)の2つの技術がある。FCCは導入のベンチマークとしてA-GPSを採用したキャリアはGPS内蔵のハンドセット普及度,TDOAを採用したキャリアに対してはレシーバの設置数を要求している。

TDOAを採用しているT-MobileとCingularは,共に今年の初めの時点でそれぞれ5000以上のTDOAレシーバの設置をしており,FCCのベンチマークに準拠している。AT&TはFCCのベンチマークに準拠していると報告をしているが,設置数は公開していない。A-GPSを採用しているSprint,Verizon,Nextelが現在,販売している全てのハンドセットの殆ど(例外はBlueberry等のEメール端末)はGPS内蔵になっており,やはり,FCCのベンチマークを満たしている。

しかし,これでE911の導入が順調だと結論付けることは出来ない。これら大手のキャリア以外に無数の中小のキャリアが存在している。CTIAには70以上の無線キャリアが参加しており,大手以外のキャリアのE911の導入状況は2年程度後れている。また,E911を実際に使うには,各地域のPSAP(Public Safety Answering Points)と呼ばれる緊急応答センターがE911の情報を受け取れるようにキャリアと接続されている必要がある。例えば,Verizonは1162のPSAPと接続をしている。しかし,FCCのデータベースには8000以上のPSAPが登録されており,もっともPSAPとの接続が多いVerizonでもまだ多くのPSAPに対応をしていない。

E911はキャリアに新たな投資を要求するが,見返りの増収が無いことからキャリアには熱心さが欠けている。だが,ハンドセットが位置情報を提供できることでLBS - Location Based Service(位置ベースのサービス)が提供可能となる。例えば,レンタカー会社のAvisはAvis Assistと呼ばれるオプションの提供を始めている。

Avis AssistはNextelの通信網を使ったサービスであり,レンタカーのオプションとしてGPS内蔵のモトローラ製の携帯電話が提供される。利用者はその電話を使い,Avisのコールセンターを呼び,行き先を告げることで,ナビゲーションの指示を音声と電話の画面に表示されるデータで得ることが出来る。車載のナビゲーションシステムでは無いので,車を降り,歩いている間でもナビゲーションの指示を得ることが出来るの。ナビゲーションの他,交通情報も得ることが出来る。Avis Assistは1日$9.95で提供されている。

E911が可能にするこの様な位置ベースのサービスが登場する事でキャリアが収入を得られるようになることでE911の導入も加速化するであろう。

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