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このシリーズは毎月20日に掲載!!


本格的になるTelcoとMSOの対決

2004年5月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.12)

米国のブロードバンドサービス市場ではケーブルTV事業者(MSO)がケーブルモデムで早く参入し,リーダーシップを取った。既存の電話会社はT1等のこれまでのデータ通信サービスへの悪影響を恐れ,最初はDSLにそれほど熱心では無かった。新興の電話会社がDSLに力を入れることで市場を脅かし始めた事で,既存電話会社もDSLに力を入れ始めた。しかし,遅れは簡単には取り戻すことが出来す,ケーブルモデムとDSLの差は開いたままで,2003年末の時点でも家庭向けのブロードバンドサービスのシェアはケーブルモデムが66%,DSLが34%であった。

しかし,TelcoはDSLのシェアを伸ばすことに真剣になっている。SBCはYahoo!と協力し,そのブランド力を使い,加入世帯を伸ばしている。2003年第4四半期にはSBCは加入世帯数を351.5万世帯に増やし,これまでブロードバンド加入世帯数では2位であったTime Warnerの335.6万世帯を抜いた。Verizon,Bellsouth等も積極的にサービス提供地域,サービス内容を向上させている。
下記の表に示すように加入者ではComcastが大きなリードを取っているが,2003年第4四半期から2004年第1四半期間の成長を見ると,SBCがComcastを上回り,Verizonの成長はTime Warnerを上回っている。

会社
2003年4Q
2004年1Q
追加加入者数
Comcast
5,284,000
5,678,000
394,000
SBC
3,515,000
3,962,000
447,000
Time Warner Cable
3,356,000
3,560,000
204,000
Verizon
2,319,000
2,664,000
345,000
BellSouth
1,462,000
1,618,000
156,000

TelcoがMSOのブロードバンド市場を脅かし始めたのに対して,MSOはTelcoの本業である電話市場を真剣に狙い始めている。昨年の5月にTime Warner Cableはメイン州ポートランドにおいて,地域内,長距離無制限の電話サービス(VoIP)を月額$49.95で始めた。Time Warner Cableの予想は最初は低かった。しかし,予想に反して加入世帯数は伸び,1年たった現在,の加入世帯数はTime Warner Cableのポートランド市におけるケーブルTV加入世帯数の10%に近い,140,000世帯に達している。Time Warner Cableは家庭向け電話事業の部門を新たに作り,今年中に同社がケーブルTVサービスを提供している地域の全てで電話サービスを提供する予定である。

昨年秋にVoIPサービスを始めたCablevision Systemsもすでに加入世帯数を50,000以上に伸ばしており,これに刺激され他のMSOも電話事業に積極的になっている。Merrill Lynchは2008年にはMSOのVoIPサービスへの加入者は160万世帯に達すると予測している。

MSOもTelcoも特にトリプルプレーをその戦略に掲げているわけではないが,通信産業を今後制していくのには音声,データ,ビデオの分野で戦っていく必要がある。MSOとTelcoはこれまでに何度か接触はあったが,戦いになった事は無い。しかし,トリプルプレーが重要になる事でMSOとTelcoの戦いは本格的になっていく。

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