デジタル流通化によりCD，ビデオショップは消えるのか 　 - 会社更生法の適応を受けるTower Records，Viacomから手放されるBlockbuster -

　2月の初めに相次いでTower Recordsが会社更生法の適応を受けたニュースとViacomがBlockbusterを手放すニュースがあった。どちらも一時はコンテンツの流通では大成功をした会社であり，１つの時代が終わったことを示している様である。

　Tower Recordsは1960年にカリフォルニアのサクラメントでスタートした初めてのレコードのスーパーストアであり，大成功をした。それまで小さな，暗いレコード店，あるいはドラッグストアの片隅で売られていたレコードを広い店舗で販売したTower Recordのフォーミュラはヒットし，ピーク時には全米で200店舗を持ち，さらに海外にもフランチャイズ展開をし，10億ドル以上の売上げがあった。

　しかし，大店舗ディスカウントストアのWalMart，家電スーパーストアのBest Buy等で音楽の販売に手を出すと共にTower Recordsの売上げは落ち始めた。さらに，ウェブによるCDの販売，さらには音楽のダウンロードが普及する事で，Tower Recordsの経営は悪化し，赤字が続くようになる。特に音楽のダウンロードによるCD販売への影響は大きく，CDの売上げはここ4年間連続でダウンしている。Tower Recordsは2001年には9000万ドルの赤字を出し，2003年春には520億ドルの借金返済が不可能になり，この2月9日に会社更生法の適応を受ける。組織再編成の後，93に減った店舗はそのままで営業を続けると発表しているが，アナリスト達は音楽を店舗で売る時代は過ぎ始めており，Tower Recordsのカムバックはほぼ不可能だと見ている。

　Tower Recordsの会社更生法適応のニュースが翌日，CBS，Paramount等を持つメディア大手のViacomはそのビデオレンタルチェーンのBlockbuster Videoを手放し，13億ドルの資産の償却をするとの発表があった。1986年に登場したBlockbusterはビデオレンタルのスーパーストア化で大成功した。1999年には全米で1500の店舗を持つ巨大ビデオレンタルチェーンとなり，Blockbusterの登場により小規模のビデオレンタル店が消えていった。ViacomはBlockbusterの大きな儲けに目を付け，1994年に同社を買収し，その資金でParamountの乗っ取りを成功させた。

　Viacomは一時ケーブル事業も持ち，ビデオオンデマンド（VOD）では先進的な実験を行っていた事もあり，いずれはビデオのレンタル事業が減ることは予期していた。1990年後半にはBlockbusterはビデオのレンタルだけでなく，CD，本，小物等の販売を始め，エンターテイメント・スーパーストアへの転向を計った。また，音楽のダウンロードキオスクのテストを含め，新しい流通へも取り組んだ。しかし，これらの投資は逆に経営を圧迫する様になる。2002年にBlockbusterは16億ドルの赤字を出す。

　2001年から2003年でBlockbusterの売上げは49億ドルから59億ドルへと増えた。しかし，ここ数年でネットでビデオレンタルを行うNetflix，それにVOD等の登場でBlockbusterの競合が表れている。Netflixは150万人の利用者を持ち，売上げは急増している。2003年第3四半期の売上げは7220万ドルで，前年同期より74%増えている。Blockbusterの売上げの成長にかげりが見えている。Blockbusterの2003年第4期の同店舗比のビデオレンタル売上げは前年比7%減であった。

　メディア会社のViacomに取ってBlockbusterはコアな事業だとは言えない。1999年にViacomはBlockbusterをスピンオフする事を計画し，別会社にするが，この計画は取りやめる。Viacomには事業内容以上にBlockbusterの価値はキャッシュフローであった。しかし，Blockbusterの赤字が増え，売上げにもかげりが見え始めたことで，ついにViacomはBlockbusterを捨てる決定をした。

　CDの販売とは違い，ビデオのレンタルは消え始めている訳ではない。VODの規模はまだ少なく，インターネットでの映画ダウンロードのMovieLinkもまだ成功には至っていない。しかし，CDの販売と同様に店舗でのビデオレンタルは先の無い事業になり始めている。