今月のMarket Snapshotでは、次世代長距離無線通信技術として話題になっている「WiMAX」の現状と市場ターゲットについてお話したい。World Interoperability for Microwave Accessの略称で知られるWiMAXは、2003年1月にIEEE(米電気電子技術者協会:Institute of Electrical and Electronics Engineers)が承認した固定無線通信の標準規格である。仕様によると、WiMAXネットワークでは、一台のアンテナを利用し、最大30マイル(約48km)の通信範囲において最高およそ70Mbpsの通信が可能であり、既存のケーブルやDSLを越える帯域をもたらすと言われている。その主な目的は、安価な敷設費用で、新たなロケーションとより広い範囲に無線ブロードバンド接続を普及させるなど、ブロードバンドラストワンマイル問題を解消する点にある。現在、遠隔地の利用者に対しては、地下に設置したケーブルやDSL回線を介してブロードバンド接続を供給しているが、コスト、労力(時間)、技術の観点から最も理想的なアプローチとは言い難い。しかし、WiMAXでは、実装においてこれら全てを軽減することが可能である。また、Wi-Fiと異なりWiMAXのシグナルは高い木や物理的障害物によって遮断されないため、ベストな接続環境を確保しやすく、大学のキャンパス等でも効果的に利用できる。この他、大都市圏など人口集中度の高い地域においては、WiMAX対応機器を幅広く活用することで、ブロードバンドネットワークの過密なトラフィックをある程度、拡散できるとの期待もある。
今年は「WiMAX」という用語に耳慣れする年に留まるだろうが、業界アナリストの間では、2005年〜2006年の間で本格的に始動し、実際に普及し始めるのは2007年の後半から2008年にかけてとの見方がある。Visant Strategiesによると、WiMAX製品の売上は2008年までに10億ドルに達すると予測されている。一方、ABI Researchでは、住宅向けラストワンマイル・ソリューションを主流に、中小企業(社内および移動中の利用)、大手企業での導入に続き、ホットスポット・バックホール、移動体通信の分野の順で、現在から2008年の間に20億ドルの売上を見込んでいる。
WiMAX技術の一般普及を目標として同技術に特化したベンチャー企業は次第に増えており、投資家らの関心も集めている。例えば、2002年11月に創設されたTrapeze Networks(カリフォルニア州Pleasanton)では、既に5,000万ドルを調達。一方、昨年8月にスタートしたWiDeFi(フロリダ州Satellite Beach)でも総額840万ドルの資金を獲得している。
先に述べた通り、ラストワンマイル問題を抱える住宅・家屋は、WiMAX市場の主なターゲットである。米国内でWiMAX技術の導入が見込まれる住宅は、2,000万世帯と予測されており、これに先駆け、TowerStreamという企業ではシカゴをはじめニューヨーク、ボストン地域の企業600社を対象に、トライアル版の試験を実施している。こうした試験を通じて、早期導入の顧客ベースを徐々に拡大させながら、今後数年の間にWiMAX技術が、現在のWi-Fiと同じようなレベルで浸透していくであろう。
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