今月のMarket Snapshotでは、今年、米国で最も注目されている技術の中からIEEE802.16a規格をテーマに、それを取り巻く現状や今後の見通しについてお話しよう。このIEEE802.16aは、本来、2002年4月に発行された無線通信規格IEEE802.16の修正仕様として、2003年1月に承認、続く4月に発行された業界標準である。ケーブルやDSLなどラストワンマイルにおける無線高速接続の実現を目的とした規格で、これに対応するネットワークでは約50kmの範囲(直線距離)に渡り、最高70Mbpsのデータ転送速度で音声、ビデオおよびデータサービスを提供できる。ちなみに周波数帯は、WiFiホットスポットへの接続に対応した2〜11GHzをカバーしている(802.11規格の仕様では通信範囲100m、最高データ転送速度54Mpbs、無許可周波数帯2.4〜5GHzに対応)。現在のところ、2002年4月に設立されたWiMAXフォーラム(The Worldwide Interoperability for Microwave Access Forum)には、大手機器ベンダやベンチャー企業など46社が参加し、同規格に準拠した無線ブロードバンド機器の製品化、互換性、相互運用性の促進に向けて活動している。
では、WiMAXフォーラムの参加企業が期待を寄せるブロードバンド固定無線アクセス市場とは、どの程度の規模なのか?Ovumの調査結果によると、2003年は62万9,000回線と比較的小規模であったが、2005年には330万回線、さらに2008年では1,600万回線に拡大するとの予測がある。つまり、ブロードバンドアクセス市場全体の5%を占めることになる。現在、ブロードバンド固定無線アクセス市場は特許技術に基づくものだが、WiMAXフォーラムではいよいよ今年から開発製品を市場展開し、年内は1500万ドル、2005年には2億ドルの売上を目標としている。
業界アナリストの中には、802.16a市場が802.11と同じような上昇傾向を辿るとの見方もあるが、今回の規格において異なる点は、多数のメーカやベンダ各社がもっと早い時期から同市場へ積極的に参入していることだ。無線LAN技術が出回り始めた当時、主に@インターネットやイントラネットの低い浸透率、A高価な導入コスト、B安定感に賭けるインフラおよび機器が原因で、市場機会を手放してしまう企業も見られた。ところが、インターネットが普及し、無線LANが大衆市場へと移行した現在、これら企業の802.16a市場に対する意気込みは強い。今後、手頃な単体価格と導入の簡便性を実現できれば、特に地方や過疎地などDSLやケーブル網を介したインターネット接続の難しい地域を皮切りに、市場が拡大していくものと期待されている。
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