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注目されるSMSを使ったインタラクティブTV - 1回で250万件のアクセスがあったAmerican Idol 2

2003年11月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.8)

 インタラクティブTVの最大の壁は視聴者が応答をするデバイスとその情報を送る通信回線である。セットトップボックス(STB)ベースのITVはその技術に対応するSTBが普及をしないと番組が提供されない,番組が提供されないとSTBが普及しないと言う鶏と卵のジレンマがある。ウェブサイトを使ったITVもあるが,テレビが置いてある部屋にインターネットに接続しているPCがある事が条件であり,また,テレビとPCの2つの画面を見なければならない不便さもある。

 簡単な投票程度の参加であれば電話が使われてきた。電話はどの家庭にもあり,また,ビジネスモデルとして無料通話,あるいはプライマリーレートサービスを使い,有料化も出来る。電話による視聴者参加をさらに進めたサービスとして携帯電話のSMS機能を使ったITVが注目されてている。

 アメリカではSMSを使ったITVは2002年に登場した。FOXネットワークはフットボール,野球,カーレース等のスポーツ中継で視聴者に監督が次に取る戦略を予想したりするサービスをウェブだけでなく,SMSも利用し始めた。アメリカのSMSの普及度は低く,キャリアはSMSの利用を伸ばしていくことに関心があり,キャリアがスポンサーとなり,SMSによる視聴者参加の番組は増え始めていった。しかし,American Idol 2の放送までは利用者は限られた物であり,大きな話題にはならなかった。

 FOXはのAmerican Idolは視聴者の投票により新人ポップスターを選ぶ番組で,2シーズン目の放送は2003年1月から5月に行われた。昨年は電話だけであったのが,今年からはSMSでの投票も可能になった。SMSで投票した人には裏情報を送るなどでSMSにより投票は徐々に増え始め,ついに5月の最終回では250万の投票があり,American Idol 2の合計SMS件数は4ヶ月間で750万に達した。投票は通信料(1メッセージ10セント以下)以外は無料であり,スポンサーの1社であったAT&T Wirelessが開発費用を負担した。SMSでの投票が行えたのはAT&Tの加入者のみであった。

 この成功はSMSを視聴者参加の番組に使うことに対する関心を大きくと高め,FOX以外のネットワークも乗り出し始めた。これがビジネスモデルとして有料サービスになるかに対しての疑問もあったが,それは2003年7月から8月に行われたABCのソープオペラ,「All My Children」のAmerica‘s Sexiest Manコンテストで可能が十分にある事が証明された。America‘s Sexiest Manコンテストは「All My Children」のドラマの中に登場する化粧品会社がスポークスマンに選ぶセクシーな男性を視聴者の投票で選ぶものであった。投票はウェブ,あるいはSMSで行えた。SMSでの投票はAT&T Wireless,Cingular,T-Mobileから行えた。ウェブの投票は無料であったが,SMSからの投票は通信料に加え,50セントの料金が課金された。それでも,ウェブよりSMSの方が簡単であり,また,SMSで投票すると他のソースでは公開されていない次週放送の情報が受けられることもあり,4週間で100万近いSMSでの投票があった。

 これだけでSMSによるITVが普及するとは断言できないが,その可能性は証明された。STBを使った高度なITVは出来ないが,携帯電話での参加であれば参加する場所は自宅に限定されず,レストランバー等の外出先でも楽しめる。さらに,STBでは提供できない,同じ部屋で複数の人が一緒に参加する事も出来る。SMSでのITVに関心を示しているのはネットワークだけでなく,SMSの利用を伸ばしたいキャリアも強い関心を持っている。

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