| Verizonが次世代移動体データ通信を開始 移動体データ通信サービスの可能性 |
2003年10月20日号
Verizon Wirelessは9月末に本格的な3Gサービスと言えるCDMA 1xEV-DOサービスをサンディエゴとワシントンDCで開始した。1xEV-DOは300 kb/s〜500 kb/sのダウンロード速度を提供する高速移動体データ通信サービスである。すでにMonet Mobile NetworksがEV-DOをミネアポリス州のダルースで提供しているが,大都市におけるサービスとしてはこれが始めてである。米国の他の移動体キャリアはcdma2000 1x,あるいはGPRSによるデータ通信サービスを提供しているが,データ速度はEV-DOに比べて遙かに遅い。1xの速度は最高で144 kb/sであるが,実際の速度は速くて64 kb/sである。
EV-DOはこれまでに存在しなかったブロードバンド通信機能を移動体データ通信で可能にする。しかし,DO(Data Only)はその名の通り,データ通信専用であり,音声通信とは別のチャンネルが必要になる為,帯域の利用の効率は低く,導入コストが高く,キャリアに取ってはリスクの高いサービスである。EV-DOは携帯電話では利用出来ず,利用者はノートブックPCユーザに限られる為に利用者層も限定される。
過去のPCユーザ向けの無線データ通信としてはMetricom社のリコシェ(Ricochet)サービスがあった。 1994年に28 kb/sの速度でサービスはシリコンバレーで開始された。サービスはアトランタ,バルチモア,ダラス/フォートワース,ミネアポリス/セントポール,ニューヨーク,フィラデルフィア,サンディエゴ,シアトル,ワシントンと広がり,2000年には128 kb/sのサービスも開始された。しかし,サービスは4万人程度の加入者しか集めることが出来ず,2001年7月にMetricom社は倒産した。その後,別の会社がMetricomの資産を買い,デンバーとサンディエゴでサービスを2002年に復活させたが,成功はしていない。
VerizonはEV-DOはこれまでの移動体データ通信より遙かに高速であり,エンタープライズの需要を狙うことで市場性は高いと見ている。しかし,他のキャリアは移動体データ通信の市場性は現時点ではまだ低いと見ている。スプリントは移動体データ通信には積極的であり,EV-DOのテストをアイダホ州のボイジで行ったが,DOのサービスを広げるのではなく,Wi-Fiのホットスポットサービスを拡大する事でノートブックPCユーザのニーズを満たし,2006年から音声とデータを同時にサポートする事の出来るEV-DVの導入を予定している。
移動体データ通信のサービスは需要が存在しないのでは無く,ユーザの求める条件のサービスが提供されていないから普及をしていない。リコシェのサービスは1990年末当時は唯一の現実的な移動体データ通信サービスであった。しかし,サービス提供地域内でもアクセス不可能な場所も多く,外出時だけのサービスでとしては多くの利用者には値段が高く,成功はしなかった。ウェブアクセスのニーズが増えると共にリコシェの速度は不十分になり,市場性はさらに薄れていった。ホットスポットサービスは高速であり,サービスによってはそれほど効果では無い。しかし,アクセス可能な場所は空港,ホテルのロビー,レストラン,カフェ等人の集まる場所に限られており,いつでも,どこでもの便利さはない。それだけにVerizonのEV-DOは注目される。サービスの価格は$79.99でリコシェと同じであるが,携帯電話と同じアクセスエーリアを持ち,速度はバーストで2.4Mb/s,平均で300 kb/s〜500 kb/s出る。これが成功をすれば,他のキャリアの3Gへの移行計画も前倒しになるであろうが,逆にヒットをしないとWi-Fiホットスポットを含めて,移動体データ通信のビジネスへの投資が消極的になるだろう。
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