| Vivendiのメディア事業撤退 - リスクの高いメディア事業への参入 |
2003年8月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.6)
1800年代にフランスで水道会社として設立されたVivendiのメディア事業の参入は,1983年にフランスの有料TV事業者,CANAL+の15%の購入で始まった。1996年にCEOになったJean-Marie MessierはVivendiのコア以外の事業を売り払い,メディア資産を増やしていった。そして,2000年にはカナダのアルコール飲料会社のSeagam社を買収し,同社が1994年に松下より購入したユニバーサルスタジオを手に入れる。
Vivendiの戦略は移動体通信とメディアの融合であった。同社は1987年に携帯電話事業を設立し,2000年にVodafonとの共同でインターネットポータルのVizzaviを始めた。しかし,携帯電話のコンテンツ事業は予想のようには伸びず,Vivendiはメディア事業への注力,それもアメリカ市場への参入を始める。2001年にVivendiは音楽ダウンロードサイトのMP3.com,それに大手出版会社のHoughton Mifflinを買収する。
映画,TV番組,音楽,雑誌等,コンテンツは豊富にあるが,流通チャンネルが弱いと考えたMessierは衛星TV事業者,EchoStarへ15億ドルの投資を行い,その10%を得る。そして,2002年にはUSAネットワーク 等のケーブルTV向けネットワークを持つ,USA Networksのエンターテイメント資産を購入する。Vivendiはユニバーサルの映画,TV番組制作,遊園地等の事業,それに新たに得たケーブルTVネットワーク等のメディア資産を1つにまとめ,Vivendi UNIVERSAL Entertainmentを作る。
しかし,Vivendi UNIVERSAL Entertainmentの勢いは長続きしない。Vivendiは大きな赤字を出し,その株は暴落する。Messierはそのメディア資産の一部を売り,赤字を減らす。しかし,株主は事業悪化の根元はMessierとそのメディア参入の戦略の失敗だと決め,CEOの首を求める。Messierは2002年7月に退陣し,Jean-Rene Fourtouが新CEOに就任する。Fourtouは即刻,Vivendi UNIVERSALを売りに出す。
TCIの元会長のMaloneが持つLiberty Media,CBSの親会社のViacom,MGM等がVivendi UNIVERSALに興味を示す。しかし,彼らの関心はVivendi UNIVERSALのすべてでは無く,価値があると思われる資産を選択しての購入である。Fourtouはメディア事業を続ける事に全く関心は無く,求めているのは一気にメディア資産を売ることであり,これら会社との話は流れる。
最近ではAT&TのケーブルTV事業を買い,最大手のケーブルTV会社になったComcastがVivendiとの交渉をした。交渉は決裂と報じられたが,その後Comcastはまだ交渉を行っていると発表している。Comcast以外では,NBCの親会社もオファーを出しており,またLiberty Mediaも再度交渉する可能性を見せている。Vivendiは8月26日の重役会で最終決定を行うと報じられている。
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