| 新メディア保有規制 - 規制緩和の概要 |
2003年6月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.5)
1996年の新通信法によりメディア保有規制の見直しを2年毎に行うことがFCCに義務付けられた。また,これまでのメディア保有規制に対して法廷はFCCに対して書き直しを命じていた。2003年6月2日にFCCは新しいメディア保有規制を発表した。この規制書き直しには大きな不満が出ている。メディア側は(当然であるが)この規制緩和は不十分だとし,法廷での戦いを続ける意図を示している。しかし,議会,消費者保護団体はこの規制緩和は一部のメディア会社の市場独占を助ける物であるとして反対をしている。消費者団体は訴訟を起こす準備を進めている。また,上院通商委員会の議長のJohn McCainはテレビ局保有の上限を35%に戻す法案を提出の予定であり,共和党,民主党議員の両方の支持を得ている。下院議会でも同様な法案が予定されている。しかし,上限を上げることには賛成の議員も多く,この法案が通るのは容易ではないと思われる。McCain議員は新たな45%の上限は認める代わりに,2年毎の見直しを要求する1996年通信法の項目を破棄することも提案している。
新メディア保有規制の内容を下記にまとめる。
テレビ局保有の上限
メディア会社が保有するテレビ局の放送範囲内の視聴世帯の合計は全米視聴世帯の35%までであったのが,今回の規制緩和で45%まで増やされた。UHF局の放送範囲の視聴世帯数は50%に割引さていた。この割引は継続されるが,トップ4ネットワークの系列局に関してはアナログからデジタル放送に移行した時点で割引は無くなる。
1つの市場での2つのTV局保有
これまでは1つの市場(地域)で2つのテレビ局を保有するには,それらの局以外に8つの別オーナーの営利テレビ局がその市場に存在する必要があった。また,その市場のトップ4局の2局を保有する事は許されなかった。2003年の規制緩和により,5つの営利テレビ局が存在する市場では1つの会社が2つのテレビ局を保有する事が可能になった。トップ4局の内の2局を一緒に保有する事は基本的に許されないが,11のテレビ局が存在する市場では例外措置が検討される。
1つの市場での3つのTV局保有
1つの市場で3つのテレビ局を持つことは不可能であったのが,今回の規制緩和で18のテレビ局(営利,非営利含む)が存在する市場では可能になった。
4大ネットワークの複数保有
4大ネットワーク(ABC,CBS,Fox,NBC)の内の2つ以上を同一会社が保有することは出来ない。この規制は緩和されていない。
放送会社と新聞会社の交差保有
1975年に1つの市場で放送(テレビ,ラジオ)会社と新聞会社の両方を保有する事は禁止になった。しかし,46のケースは祖父条項で認められていた。今回の規制緩和では4つのテレビ局が存在する市場では新聞会社と放送会社の交差保有が可能になった。
1つの市場での複数ラジオ局の保有
これまで45以上のラジオ局がある市場では8つまで,30から45局の市場では7つまで,15から30局の市場では5つまで,14局以下の市場では5つまでのラジオ局の同時保有が可能であった。この規制は基本的に変わっていない。しかし,これまでは局の信号の届く範囲でその市場を決めていたに代わり,より単純にArbitron社の市場分けが使われる。
ラジオ局とテレビ局の交差保有
規制は市場規模により異なり,最高で許されていたのは2つのテレビ局と6つのラジオ局の交差保有であった。今回の規制緩和で9つ以上のテレビ局が存在する市場ではラジオ局とテレビ局の交差保有に対する規制は無くなる。保有可能な局数はラジオ局とテレビ局のそれぞれの同時保有の規制で決まる。9つ未満のテレビ局の市場では2つのテレビ局を同時保有しているメディア会社は新聞社の交差保有は出来ない。3つ以下のテレビ局の市場では新聞,ラジオ,テレビの交差所有は許可されない。テレビ局が4つから8つの市場では下記の内の1つが許される。
* | 新聞社1つ,テレビ局1つ,それにその地域で許されている同時保有数の半分のラジオ局 |
* | 新聞社1つ,その地域で許されているラジオ局同時保有の上限までのラジオ局。テレビ局は保有出来ない。 |
* | 2つのテレビ局,その地域で許されているラジオ局同時保有の上限までのラジオ局。新聞社は保有出来ない。 |
「from USA」 のバックナンバーはこちらです
|