DRI テレコムウォッチャー  from USA

このシリーズは毎月20日に掲載!!


メディア規制緩和 - 6月2日の規制緩和の影響は

2003年5月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.4)

 2003年6月2日にFCCはメディア所有に関する規制の緩和を発表する予定である。この緩和により同一企業による同じ地域での新聞とTV放送局の交差所有が認められる事になる。これにより,メディア会社は1つの地域で新聞,TV等複数の媒体を所有し,囲い込みを狙った営業が可能になる。トップ20のテレビ局グループ(局を所有している企業)の内,新聞媒体の大手でもある会社はNew Corp/Fox(TV局グループ1位),Tribute(5位),Gannet(8位),Hearst-Argyle(9位),Cox(13位),E.W. Scripps(16位),Post-Newsweek(19位),Media General(20位)と8社ある。これらの会社はこれまで新聞を出版している地域ではテレビ局を持つことが出来なかった。今回の規制緩和により,テレビ局の売買/交換で新聞とテレビ局の交差所有を進めて行くであろう。
 また,この規制緩和でテレビ局グループが持つことの出来る局の規模の枠も増えるはずである。所有するTV局がカバーする地域の人口を合計し,それが総人口の35%を越える規模の局を持つことはこれまで許可されていなかった。(実際はViacomは38.8%,Foxは37.8%と期限限定で枠を越える所有を許可されていた。)今回の緩和により,この枠は45%へと増やされる見込みである。
 この局の規模の計算ではUHF局の地域の人口は50%割引される。同じニューヨークの局でもVHF局とUHF局ではその範囲の人口が倍も異なる事になる。これは,UHF局の所有を楽にする事が最初の目的であった。しかし,TV視聴者の85%は電波を直接ではなく,ケーブルTVの再送信で受信している現在,意味のない措置になっている。逆に規制の盲点でもある。例えば,Paxson社はUHF局に手を出すことでその規模を大きくしてきた。Paxsonの人口シェアは34%と計算されているが,持っている局の殆どはUHF局であり,実際に同社がカバーしている地域の合計人口は総人口の66%を越えている。この計算方法を見直すべきだとの意見も多くあるが,今回の規制緩和ではこれは据え置きになると思われる。
 自社系だけでなく,スペイン語放送のTelemundoを買収し,さらにPaxsonの32%も持っているGE/NBCはこの規制緩和後に積極的に局を増やしていくと思われる。GE/NBCはTV局グループとしては4位であり,約31%の人口シェアがある。
 局グループで1位のViacom,2位のNews Corp./Foxも放送局数を増やして行くであろう。しかし,Viacomは売りに出ているVivendiの資産(特にUSA Channel,SiFi Channel等のネットワーク)の購入を検討しており,New Corp.はDirecTVの購入が決まっており,資金にそれほどの余裕は無く,それほど積極的には動かないと見られている。この2社がどれほど積極的にテレビ局の購入に走るかは,今回の規制で同一地域で複数の局を持つこと(Duopoly)を禁止する規制も緩和されるかによって決まると考えられる。特にCBSとUPNの2つのネットワークを持っているViacomは,1つの地域でそれぞれのネットワークの局を持ち,効率の高い経営をする事を狙っている。
 だが,これらテレビ局の購入を狙っている会社以上に,これを機会に収益の低い局を手放そうとする会社の方が多く,売り手主体で進むであろう。

「from USA」 のバックナンバーはこちらです





COPYRIGHT(C) 2003 DATA RESOURCES, Inc. ALL RIGHTS RESERVED.