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TVネットワークの番組制作規制の動き Fin-Syn法の復活はあるか?

2003年3月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.3)

 ABC,CBS,NBC等のTV放送ネットワークが自らプライムタイムの番組を制作することは流通チャンネルを自ら持たない番組制作会社に対して不当な競合になるとして,1970年にFCCはFinancial-Interest and Syndication規制(通称Fin-Syn)を作り,TVネットワークがプライムタイムのプログラムの権利を保有すること,あるいはそのシンジケーションを行うことを禁じた。これにより,ネットワークはその番組制作部門を手放すことになった。メディア大手の1社であり,2000年にCBSを買収したViacomはFin-Syn法により,CBSが手放した会社である。

 FCCは1991年にFin-Syn法の緩和を行うが,この規制に反対のネットワーク会社などはFin-Synの合憲性を法廷で争い,勝訴する。この結果,1995年にFin-Syn法は廃止される。番組制作会社はTVネットワークが自らのプログラムを作り始めることで流通チャンネルが無くなることを懸念し,自らTVネットワークへの参入を行う。1986年に一足早くネットワーク作りを始めたThe News Corp(FOX)に続き,1995年にAOL Time WarnerはThe WB,ViacomはUPN(Universal Paramount)を作る。Walt Disneyは1999年にABCを買収し,2000年にはViacomはCBSを手に入れる。この結果,7つのネットワーク(NBC,CBS,ABC,Fox,WB,UPN)の内,コンテンツ会社が持っていないネットワークはNBCだけになっている(NBCの親会社はGE)。

 4大TVネットワーク(NBC,CBS,ABC,Fox)が放送しているプライムタイムの番組で自らが権利を持っている,あるいはプロデュースしたプログラムの率は1992年の32%から76%へと増えている。このままではネットワークを持たないコンテンツ会社のTVプログラムにおけるシェアは減っていく一方である。スタジオ,アーティスト,それに広告代理店はTVネットワークに対する番組制作の規制の復活を求めている。彼らはFCCに対して,TVネットワークが自ら作ることの出来るプライムタイムの番組を最大75%に規制する事を求めている。

 Fin-Syn法は法廷で敗訴した事からこのような規制が復活する可能性は低いと思われ,ネットワークは無視してきた。しかし,最近になり規制を賛成する意見が膨らみ,ネットワークは真剣にFCCに対してこの規制に反対をするロビー活動を行っている。

 TVネットワークは1つの会社が持つことの出来る放送局の規模の緩和を求めている,現在,1つの会社が持つことの出来る放送局の数は,その放送範囲内の人口が総人口の35%を越えてはならないと決まっている。ネットワークはこの枠を取り外す,あるいはその上限を大きくと増やすことを求めており,FCCはその検討を行っている。

 この規制の緩和はTVネットワークの勢力を大きくと増やすのもであり,これを認める代わりに番組制作の規制を作る事を求める声が出ている。FCCは保有出来る放送局の上限を含めたメディアの保有規制の見直しを行い,今年の6月にはその結果を出す予定でいる。しかし,これは色々な会社の利害に関係する問題であり,判断は容易でない。このFCC委員会に対して勧告を行うはずであったFCCメディア局は勧告は出せないとの返事を行い,結論はFCC委員会が独自に行うことになった。これにより決定に対する政治的な要素が高まり,最初は対象外であった番組制作規制の話も妥協案として浮上して来ている。

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