| DirectTVを誰が得るか - News Corp,SBC,あるいは? |
2003年2月20日号 (ブロードキャスティングレビューシリーズ No.2)
昨年12月にHughesとEchoStarは合併の計画を解消した。HughesはDirecTV,EchoStarはDish Networkを持っており,2社の合併によりケーブルTV事業者に容易に立ち向かうことの出来る規模のデジタル衛星TV事業者が誕生するはずであった。しかし,2社しかないデジタルTV事業者同士の合併は独占禁止法に触れると判断し,FCC,司法省ともに反対であった。EchoStarはこの合併はケーブルTV業界に対する本格的な競合を作るには不可欠だとして,政府の意見を変えようとしてきたが,その可能性は低いと判断してこの合併をあきらめた。
これにより,誰がHughesをGMから買うのかが話題になっている。筆頭はNews Corp.である。New Corp.は2年前にGMがHughesを売る事を決めた時,最初にNews Corp.がが名乗りを上げた。New Corp.はHughesを欲している。しかし,News Corp.とGMは2年近い交渉を行ったが,結局GMは後から交渉を始めたEchoStarとNews Corp.を争わせ,最終的にEchoStarを選んだ。この事からNews Corp.はGMに対して悪い感情を持っている。News Corp.会長んのRupert MurdochはGMが誠意ある交渉を行うならHughes買収の話に応じるが,もし以前のように競売にするつもりなら手を引くと発言している。
News Corp.がGMの態度を伺う間,SBCがHughesに興味を示しているとのニュースが流れた。SBCは自社が行ってきたビデオサービスの計画を中止しただけでなく,その後に買収した電話事業者のPacific Telesis,Ameritech,SNETが行っていたビデオ事業をすべて中止させて,売りに出した。この事からなぜSBCはデジタル衛星TVサービスのトップ事業であるDirecTVを持つHughesの買収をするにかに対して疑問もある。
SBCがHughesに関心を持つ理由は2つ考えられる。1つは電話,インターネットアクセス,ケーブルTVのトリプルプレーで既存電話会社の市場を狙っているCLECの登場である。SBCの本拠地であるテキサスでは例えばGrande Communicationsがある。同社はSan Marcosに本社を持つ同社はAustinからSan Antonioの間の5都市でFTTCのネットワークを作り,電話,高速インターネットアクセス,それにケーブルTVのバンドルサービスを行い,約10万の加入世帯を持っている。これらトリプルプレーを行うCLECは増えている。しかし,既存電話会社のSBC等の市場を脅かす規模にはほど遠く,Hughes買収に値する理由とは言えない。
もう1つ考えられる理由はデータ通信のためである。SBCを含めたILECはComcast等のケーブルTV事業者を競合と見ている。恐れているのはそのケーブルTV事業では無く,ケーブルモデムサービスであり,その上で提供されるVoIPサービスである。すでに70%近い世帯がケーブルTVサービスに加入しており,ILECがビデオ事業に参加しても容易に対抗は出来ない。しかし,高速データ通信はまだこれからの市場であり,米国では電話会社のADSL以上にケーブルモデムの加入者が多い。この市場ではサービス提供可能な地域が多い事業者が最終的に勝ち残ると思われる。土地が広く,人口密度の低い地域が多くあるアメリカではケーブルモデムもADSLも提供不可能な場所が多い。この事から衛星を使い,双方向の高速インターネットアクセスのサービスを提供しているHughesのDirecWayが注目されており,SBCの狙いはDirecTV以上にDirecWayであるとの意見もある。
これまでビデオ事業に対しては非常に消極的であったSBCが本気でNews Corp.とHughesを奪い争う可能性は低いと思われている。しかし,Hughesに関心を持っているのはこの2社だけではない。噂に出ている中で興味深いのはケーブルTV事業者である。地域電話事業者と同様にケーブルTV事業者は事実上地域独占であり,MSO同士が同じ地域で争うことは無かった。しかし,ケーブルTVの加入世帯数は飽和に達し,デジタル衛星TVサービスの普及で加入率は減少し始めている。売上げを伸ばすには他社のシェアを奪う必要があり,いずれかのMSOがHughesを買収し,他のMSOに対抗する可能性も十分にある。
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