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DRI テレコムウォッチャー |
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復調に転じたFTとDT
2003年9月15日号
FT(フランステレコム)とDT(ドイツテレコム)は昨2002年以来、過去の放漫な投資政策が祟り、巨額の負債の返済を迫られている。両社ともに、厳しい緊縮政策の下で財務の再建に当っている点で共通点を有する。
ところが2003年第2四半期の決算から見ると、両社の業績は比較的好調である。FT、DTともに、米国、日本、欧州の主要電気通信事業者がおおむね減収となっているなかで、増収増益を達成した。両社ともに固定通信部門が減収であるが、この減収分を上回る増収をあげている点が特徴である。特にFTでは、前年同期対比、収入減の比率も低下傾向にある。
これまで大幅な赤字に悩まされてきたDT新会長のリッケ氏は、2003年の株主総会の席上、大変な決意で2003通年のDTの黒字を確約したものであった。しかし今回の決算からすると、下半期に大きな異変が起こらない限り、この約束は遵守される見通しである。
比較的、両社の業績が復調に転じてきた理由としては、(1)資産売却を始めとして、両社ともに徹底した支出抑制政策を実施しており、これが効果を奏していること(2)固定部門収入減の分を新規部門(携帯部門、ISP部門)の収入増、あるいは海外における電気通信部門(特にDTの場合の東欧への投資)の収入増で支えていることが挙げられよう。
また、両社ともにEU、あるいは国内規制機関からの度重なる回線開放、料金値下げの勧告に抗して、自社のシェアの維持に大きなエネルギーを割いた点が注目される。このような努力により、米国、日本に比べ比較的大きい市場シェアの確保が可能となっている点も忘れてはならない。
実のところ欧州における電気通信事業者の業績の回復は、FT、DTだけでなく、他の欧州の電気通信事業者全体について見られる現象である。今後電気通信事業者は、どの分野に投資先を求めるべきだろうかという趣旨の記事すら報道されている。最近のビジネス・ウィークに紹介されたロンドンの調査会社、jcf Groupの調査によると、2003年中に欧州電気通信会社(18社)の負債は520億ドル減少し、1900億ドル程度(営業利益の1.6倍程度でさほど高い数字ではない)まで下がったとのことである(注1)。
なおBT(ブリティッシュテレコム)は、FT、DTとある程度状況が異なる。今期増益となったものの、収入は全く横這いにとどまった。多くの資産を切り売りして固定電気通信に特化したために、新たな収入源を求めるのに、苦労している状況が伺える。同社の財務状況については、また近々、別個に取り上げることとしたい。
以下、本論ではFT、DTの最近の収支の状況を紹介する。
FT、強い増益増収基調
まず表1により、FTの2003第1四半期の収入を見ることとする(注2)。
表1 FTの収入(単位:100万ユーロ)
項 目 | 2003年第1四半期 | 2002年第1四半期 | 2003/2002(%) |
総収入 | 11,476 | 10,991 | 4.4 |
Orange(携帯電話サービス) Orange France Orange UK その他Orange | 4,268 1,838 1,419 1,011 | 3,871 1,716 1,307 849 | 10.3 7.2 8.8 19.1 |
Wanadoo(ISP) アクセス、ポータルポータル及び電子商取引 電子電話帳 | 630 386 244 | 494 256 238 | 27.5 50.8 2.5 |
フランス国内通信 固定電話 ビジネス・サービス 放送・ケーブルテレビ その他収入 | 4,424 3,352 764 104 204 | 4,482 3,420 749 100 213 | -1.3 -2.0 2.0 4.0 -4.2 |
フランス外電気通信サービス Equant(多国籍企業サービス) 固定電話サービス Orange外の携帯電話 その他サービス | 2,254 677 1,124 266 169 | 2.144 580 1,178 194 192 | 0.5 -0.5 -3.1 37.1 -12.0 |
上記の数値は、前年同期の数字と比較できる形に修正したものを使ったが、これによれば、どの事業部門ともおおむね前年同期を上回る成果を挙げている。特筆すべきなのは、2003年第2四半期におけるフランス国内固定電話の減少率-2.0%は、前2期に比し改善を示していることである(2002年第4四半期は-7.5%、2003年第1四半期は-4.8%)。
フランステレコムはさらに、2003年上半期について収支に関するデータを発表している。表2にその数字を示す。
表2 FTの収入・利益(単位:100万ユーロ)
項 目 | 2003年上半期 | 2002年上半期 | 2003/2002(%) |
収入 | 22,851 | 22,002 | 3.9 |
EBITDA | 8,485 | 6,802 | 24.7 |
営業利益 | 4,645 | 3,180 | 46.1 |
投 資 | 2,162 | 3,073 | -29.7 |
上記の数字は、表1の場合と同様、前年同期との比較の便を考慮したもので、実数値ではない。しかしこの数字から、FTが前年同期に比し、大きく利益を向上したことが読み取れる。
FTは、FT2002計画の中で、初年度に15億ユーロのキャッシュフローを生み出すことをその重要な目標の1つとしていたが、上記の通り好調な利益創出の状況から、同社はこの目標を2003年上半期ですでに達成したとしている。
なおFTは本決算の機会に、2003年次のガイダンス(目標数値)を次の通り発表した。この目標は、FT2002計画実施の初年としては妥当なものであろう。
- 前年との対比ベースで3%から5%の収入増
- 168億ユーロ超のEBITDA
- 92億ユーロ超の営業収入
- 負債に回すことができる40億ユーロのフリー・キャッシュ・フロー(資産売却分除外)
DT、2003年通期の黒字が確保できる見通し
DTのリッケ会長は2003年8月13日、同社の2003年第1四半期における決算を発表した。その主要項目および各事業部門の業績は、表3、表4に示すとおりであるが、リッケ会長は、特に債務の償還が順調に進んでいる点を強調し、「われわれは2003年半ばに年末の目標を到達した」と宣言している(注4)。
今回のDTの報告は、表によらず、2003年第1四半期の報告より簡単なものとなっている点が注目される。また上半期の収入が前年同期に比し5.7%増大したとはいえ、実は2003年第1四半期に比し、第2四半期の収入は横這いにとどまり、また第1四半期は、前年同期に比し、6.2%の収入増になっていたのに比すると、収入増加率は鈍っている。
本年の黒字確保は問題ないにせよ、DTが確固とした成長路線を確立するにはまだ多くの努力が必要とされよう(注5)。
表3 DTの主要経営指標(2003年第2四半期、単位:億ユーロ)
項 目 | 2003年上半期 | 2002年上半期 | 2003/2002(%) |
収入 | 272 | 258 | 5.7 |
純利益 | 11億ユーロ | -39億ユーロ | - |
フリーキャッシュフロー | 49 | 34 | 44.0 |
負 債 | 530(第2四半期末) | 563(第1四半期末) | -5.9 |
表4 DT主要4部門の2003年第上半期の主な業績
事業部門 | 業 績 |
T-Com(固定通信部門) | T-DSL(T-Comが販売するDSL加入者数は増大しており370万に達した。収入は前年同期に比し2.7%減少しているものの、3億ユーロを節減した結果、EBITDAは1.7%増加して51億ユーロに達した。 |
T-Mobile International | 加入者数は、この期間280万増加し6,140万に達した。収入も19%増えて109ユーロに達した。加入者の平均月額収入(APRU)も増加している。T-MobileUSも加入者数は1000万を超え、APRUも4ドル増大する優良携帯事業になっている。 |
T-Online | T-Onlineの収入は、昨年同期比21%と大きく伸びて、8.94億ドルとなった。これは特にブロードバンドを含め、加入者が大きくの伸びたことによる。1年前マイナスであったEBITAは、+8.94億ユーロへと大きく改善された。 |
T-System | 困難な経済情勢にもかかわらず、収入を51億ユーロへと少し、伸ばすことができた。EBITAも節減により、22%向上させ6.23億ドルに達した。ダイムラー・クライスラーから12億ユーロの受注を最近受けるなど、将来見通しは明るい。 |
(注1) | 2003.9.1付けビジネス・ウィーク、"Europe!s telcos :what to do with all that cash?" |
(注2) | 表1、表2は、2003.7.29付けFTのプレスレリース、"France Telecom :Q2-2003 Revenues"の2つの表を利用した。 |
(注3) | 2003年2月1日付テレコムウォッチャー、「FT、新会長ブレトン氏の下で経営再建3カ年計画実現実施に乗り出す」 |
(注4) | 2003.8.13、DTは2003年上半期決算について、リッケ会長、COOのリック氏および各部門を担当する責任者からの簡潔な報告をプレスレリースで出している。DT財務の解説は、おおむねこの資料によった。 |
(注5) | 2003年8月1日、テレコムウォッチャー、「ドイツの市内通信市場、完全自由化へ」 |
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