米(ベイ)エリアIT通信


製品の「命」を見守るPLM技術

2003年3月号

 今月のMarket Snapshotでは、Product Life Management市場の動向を観る。Product Life Management(以下:PLM)は企画から設計、生産、管理に至るまで一貫して製品 のライフサイクルを管理する戦略的なビジネスアプローチであり、人、工程、そして 情報のすべてを単一環境に集約する。PLMの構成要素は:@基盤技術および産業標 準、A情報オーサリングツール、B中核機能、C機能レベルのアプリケーション、さ らに他のエレメント上に構築されたビジネスソリューションと多岐に渡る。特に、製 品の部品に関するデータベース(技術、部品番号、サプライヤ、在庫状況などの情 報)はPLMの中核を成すもので、設計技師へ製品やリードタイム、在庫の情報変更通 知を即時送信する機能はPLMの強みであり、製造業界を中心に成長している所以とも 言える。

 事実、ARC Advisory Groupの研究結果によると、2002年におけるPLM市場は56億ドル を記録しており、2007年までには20%の年間平均成長率を伴って140億ドルに発展す ると予想されている。また、将来的には中間市場に焦点を絞ったソリューションとし て幅広く展開するにつれ、大手企業以外からの需要増加も予想される。Aberdeen Groupでは、この傾向が米国におけるPLM市場の成長に一役を買うものと観ている。国 際レベルでも、PLM市場を主導するのは米国をはじめ欧州、アジア太平洋地域がこれ に続いている。2005年の予測数値では米国が22億8700万ドル、次いで欧州が18億1300 万ドル、アジア太平洋地域が9億9000万ドルに達する見込みだ。また、2002年におけ る世界のPLM支出を産業別で見ると、自動車産業をトップに高度技術、航空宇宙およ び防衛の3分野が全体の75%を占めている。

 では、実際どのようにしてPLM技術が企業の業績やコスト削減に貢献するのか?これ については、世界全体におけるPLM支出の25%強を占める自動車産業の例で見てみよ う。PLMの利点は、既に試験を完了させ、実証済みである技術設計および製品性能に 関するデータを設計技師が再利用できることにある。例えば、衝突試験に要求される 新条件を見直し、これと類似した過去の設計および試験プロジェクトを憶えている設 計技師が、キーワードとデータ検索によって適確な情報を迅速に引き出す。サイクル 時間とコストを縮減させると同時に収益性を高めるには、データを企業や組織全体に 可能な限り素早く移動させる必要がある。前述の通り、新しい部品や設計変更の情報 が様々な部門へいかに速く伝達されるかによって、関係者が対応策を考案し、製造、 リエンジニアリング、出荷に至るまでの時間が大幅に削減されるのである。

 近年、多数のベンダではPLMシステムの構築用ソフトを手掛けるようになってきた。 また、大手ERP、データベース企業も積極的に取り組んでおり、2001年のSDRC買収を 契機にPLMベンダとして最大手の座を獲得したEDS PLM Solutionsを筆頭にSAP、Sun Microsystems、IBM PLM Solutions/Dassault、PTC、MatrixOne、Agile、 Intergraph、Eigner各社がPLM市場のキープレーヤーとされている。PLM関連ソフトウ エア、アプリケーション、サービスを展開するサプライヤの種類は幅広く、PLM市場 は割合の大きいものから順に:@総合的な技術ベンダ(約50%)、ASI、再販業者、 VAR(約25%)、Bアプリケーションに特化したサプライヤ(約20%)と大別して3種の セグメントを持つが、多数のベンチャー企業がこれに加わることで、今後さらにPLM 市場が活気づいていくであろう。

(c) 2003 KANABO Consulting


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