先月のMarket Snapshotでは、 米国における2003年のIT支出動向の概要と、モバイル業界をテーマにした。今月はその続編として、ストレージ市場に焦点を当てる。総体的には最新のディスクドライブ・デザインにおける容量を拡張するアプローチに比べ、2003年はストレージ仮想化(Storage Virtualization)ソフトウエアの分野に関心が高まりそうだ。規模に関係なく、今年も企業各社では新たなストレージ技術を購入していくだろうが、実際に求めるものは、既存のストレージ技術の効率性を最大限に引き出すソフトウエアである。Ovum Researchが発表したネットワークストレージ市場に関する報告書によれば、ストレージ容量に対する需要は各年、最低50%の割合で上昇すると予測されている。これには、ビデオをはじめオーディオ、文書/イメージ画像、ウエブページなど次々と誕生するマルチメディア・オブジェクトの他に、記録容量に対する規制条件や一般の企業からのニーズも要因とされている。
現在、大半の米国企業では、従来より使われてきたDAS(Direct Attached Storage)の他に、NAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)を組合わせたアプローチを採用している。しかし、この方法については、社内あるいは各部門に設置された装置上のストレージアセットを効率的に監視しにくいなどの弱点が指摘されている。従って、冒頭で話した「ストレージ仮想化」では、一括統合されたハードウエア導入のように、ストレージの容量と性能を統一的に見れる点がポイントとされている。 『Internet World』誌が発表したストレージ利用率に関する調査では、対象となった米国企業の40%が「5割以上を利用」、26%が「3割以上5割未満」、22%が「正確に把握していない」、12%が「3割未満」と回答している。この現状を踏まえ、AMR Researchの上級アナリストBob Parker氏は、ストレージ仮想化により、今後、企業各社ではストレージの利用率を最大70%から80%に抑えるため、残りを別のストレージとして拡張できると述べている。このストレージ仮想化のアプローチについては、現在のところEMCやHP、IBM、Veritasなどが牽引しているようだ。
ストレージ管理におけるその他の開発には、この他にEnterprise Continuityに関する技術とサービスもある。これは、突発的な自然災害や緊急事態から企業のコンピュータネットワークを保護する機能で、2002年10月にSun Microsystemsが発表したプログラムがある。未使用のダークファイバに着眼したSunでは、これにNortel Networkの「OPTera 5200」光ネットワーキング・プラットフォームを利用して、災害や緊急事態から影響を受けないよう、単一のクラスタとして機能するコンピュータを分離させる。同技術/サービスは特に金融サービス会社やオンラインによる小売業者をはじめ、数時間であっても、データプロセスの機能停止が大きな損失に繋がりかねない組織や機関を対象に設計されているが、災害時の対策として、こういった技術は今後、様々な企業間で広く注目を集めていくであろう。
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