米(ベイ)エリアIT通信


米国における2003年のIT支出動向

2003年1月号

 今年最初のMarket Snapshotでは、米国における2003年のIT支出について動向を観てみよう。2002年、米国では前年に発生したテロ事件の影響や、大手企業の不振などIT業界にとって風向きの厳しい年であった。その状勢はIT支出にも反映し、その前年比で平行線を描いていれば良しとすべきで、大抵の場合は大幅な削減に終始してしまった。しかし、今年、米国ではその様相に変化の兆しが聞かれる。産業界に広がる不安定な経済状況にあって、楽観視はできないだろうが、IT支出については、全体的に前年比1〜5%の割合で増加すると見込まれている。また、McKinsey社の調査結果によると、1999年から2001年にかけてのIT支出には、年間平均成長率24%で通常のトレンド(1999年:約3100億ドル、2000年:約3500億ドル、2001年約4800億ドル)を2400億ドル上回る「浪費」が見られた。しかし、2002年から2005年に関しては4%と通常の動向線へ次第に近づいて行き、IT支出額は2003年で5000億ドル強、2004年は約5500億ドル、さらに2005年には約5800億ドルに達すると見込まれている。

ITへの予算枠は、以前に増して企業全体での事業および戦略に関する決定と強い繋がりがある。つまり、企業がIT支出に相応しいコストを算出する際、当然のことながら、投資回収が確実に見えるラインアイテムを含む必要がある。これについて『Internet World』誌では、過去2年間を振返り、ビジネスに関する諸問題とその結果誕生した様々なソリューション/アプリケーションが、ITへの投資を主導する要素であったが、この傾向は今後も続くと見ている。企業各社では、自社の顧客ベースの維持・拡大、事業の成長、さらに効率性を向上させるものへの投資に積極的である。また、データの正確性と安全性の高いビジネスを確保するため、セキュリティへの投資額も上昇傾向にある。

■2003年の動向−モバイル業界の場合: 現在、企業による無線ネットワーク・ハードウエアの導入が急増している。IDCの調査結果では、米国における無線ハードウエア市場は2002年で7億1500万ドルだったが、2003年には9億3400万ドル、さらに2006年は13億8000万ドルに達するなど着実な上昇傾向が予測されている。米国では、これら無線ネットワークにWi-Fi技術を採り入れている。このWi-Fi技術は、多くの一般家庭や小企業に設置されてきた安価なハードウエアと類似したもので、無線アクセスポイントおよびアダプタの費用についても、近年では数百ドル程度で済む。今のところ速度の面では、広帯域イーサネット接続のそれを下回るが、Wi-Fi技術も徐々に速くなっており、業界の中には、建物間のネットワークを接続する目的で、無線技術を利用する傾向が強まるとの見方もある。そして、このトレンドと並行して注目されるのが、セキュリティの問題だ。現在、Wi-Fiベンダ各社では、ユーザが簡単にネットワークを検知・利用できるよう、無線LANにおける様々なセキュリティ脆弱性の解決に取り組んでいる。例えばCisco社では、セキュリティ技術を自社のアクセスポイントに組み込んでいるが、これはリテール業界での幅広い導入を考慮したものだ。事実、米国の大手小売業者Wal-MartやHome Depot等では、支払いの際、顧客が長い列に並ばずに支払いできるよう、無線を利用したチェックアウト設備の試験導入にも乗り出している。

(c) 2003 KANABO Consulting


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