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DTとKPNは専用回線に一律料金制を導入 またしてもこれを'距離の消滅'と呼ぶのか?
2003年8月15日号
数年来、通信事業会社の関係者や業界の観測筋が、同業界における特段の変化や大きな動きがあるたびに'距離の消滅'と呼ぶのをよく耳にしてきた。この言葉によれば、長距離サービスに伴う割増料金はもはや存在しないということを意味する。
'距離の消滅'を促す主な要因には次のようなことがあった:
* ファイバー伝送コストの減少
* 例えばDWDMといった技術を用いて一本のファイバーケーブルで利用可能な容量の増加。こうした機器を使うことによるコスト削減と奏効
近年、距離の終焉には一時的な要因が加わった:
* 1990年代後半における供給過剰の結果として、多数のルートでの容量過剰
* 容量過剰のために、容量や(あるいはその容量をインストールした会社自体についても、)DWDM等のターミナル機器についての'出血セール'的な価格
容量とターミナル機器についての現在の一時的な低価格は、供給過剰による直接的な結果である。それは、もともとのネットワークを築いた事業者の多くと、しばしば融資と結びつけて事業者に機器を供給したメーカーの倒産が供給過剰を助長したのであった。
'距離の消滅'はまた、アメリカでは'郵便切手料金'の電話版としても論じられてきた。'郵便切手料金'という言葉は、距離に関らず全通話に対して適用される分毎の一律料金を意味して使われる。しかし、これはアメリカに限ったことであるかもしれない。アメリカでは通常、市内通話料金は電話回線使用料に組込まれており、したがって市内通話は無料で通話料金は長距離電話に関してのみ発生するという認識ができあがっているのである。
近年、市内通話以外の電話に関する一律料金制がいくつかの通信事業者により導入されてきた。しかし'距離の消滅'は市内通話と長距離通話が同じように課金される時点で初めて起こり得るのである。これは長距離通話についての大幅な価格引下げを意味するのであり、こうした動きはほとんどの国では当分起こりそうもない。(もちろんこれは国の大きさによる。国土が468平方キロのアンドラや160平方キロのリヒテンシュタインなどは、そもそも長距離料金を課すという考え方はほぼない。)それでもやはり、距離と無関係の一律通話料金は将来予測できることである。特にIP(もしくは未知の後継者)が長距離ボイス同様市内通話の標準になり、現在インターネットに採用されている距離と無関係の料金モデルがボイスのみならずデータサービスにも適用されるようになればそれが可能である。
前言にも関らず、ここ数ヶ月のDT(ドイツ)とKPN(オランダ)による専用回線に距離と無関係な料金適用を適用することへ向けた動きは、ヨーロッパ通信業界にとって重大な出来事であると考える。オランダはかなり狭い(37,330平方キロ、国土の広さは西欧で15番目)が、ドイツは広い(356,910平方キロ、西欧ではフランス、スペイン、スウェーデンに次ぐ4番目に広い国)。広さに関らず、距離と無関係な料金体系を採用するこれら事業者の動きは、いくつかの理由で思いきった行動であると言える:
* 非常に近距離の回線については料金が上がる(少なくとも新規申込みについては上がる)。これはこうした回線の利用者には不評を買うであろう
* 専用回線毎の平均収入は大きく落込む
* ユーザーは概して長距離回線を利用しがちになる
この最後の点については、距離に伴う課金がなければ、卸売条件で買いつける権利がないプライベートネットワークのユーザーやサービスプロバイダーは別のネットワーク・トポロジーを採用することになるかもしれない。距離に対する割増料金がなければ、冗長性を確保するためのネットワークサーバーまたはノードの最少数は2つであり、現在適用されている数よりも相当少なくなりそうである。
上記の例のひとつとして、大・中規模都市には隈なくその中心地に店舗を持つ全国規模の集合型の小売店があげられるかもしれない。そこでは専用回線をベースにしたデータ・ネットワークが使われている。現在そうしたネットワークは、(1ヶ所または複数の)セントラル・サイトから配信ノードに向け高バンド幅の回線を使った地域的な配信ノードであることが多い。こうした事例では、配信ノードはMTBF(平均故障間隔)を縮め、(コンポーネントの数が多いほどサービスに障害が起こる可能性が高いという前提で)サービス全体の信頼性を落とすことが往々にしてある。
距離に無関係な料金体系が敷かれれば、各リモートサイトは、上述のようなヒエラルキー型ネットワークではなく非常に単純なスター型のコンフィギュレーションを用い、直接専用回線を使ってセントラル・サイトへ接続することができる。また、バックアップが必要とされるところでは、適度なバンド幅があればISDNが利用できるかもしれない。あるいは、例えばプライマリー接続よりも低いバンド幅を使って、何らかのトライアンギュレーションで複数のセントラル・サイトへ適用させることができるかもしれない。
セントラル・サイトへ直接接続が戻るような、より長い回線の利用が増えるようであれば、DTやKPN、また後続企業は専用回線からの収益に次のようなダブルパンチを受けるだろう:
* 第一に、平均的な料金が大きく下がること
* 第二に、専用回線の平均的な長さが伸びることで、平均コストが上がること
前にも述べたとおり、オランダはドイツよりもかなり小さいので、KPNの課題はDTにとっての課題ほど大きくはない。しかし、DTについて興味深い点は、同社が標準オプションとして専用回線でISDNのインタフェースを提供する数少ない事業者のうちの1社であるということである。この観点からすると、同社の専用回線はまさに'固定化'されたISDN回線であり、DTのISDNの価格体系がDTの専用回線にも適用されてしかるべきである。しかし、過去にも現在もそれは行われていない。
DTのISDN通話の課金構造は単純で、一日の時間帯の一定時間における市内通話料金(分単位)と、同時間帯についての長距離通話料金(分単位)がある。この長距離料金は市内通話料金に比べ(分毎に)大体50%高い。これが専用回線に適用されると想像しよう。単純なことであるが、'市内'回線よりわずかに長い回線を使っていただけのユーザーには非常に不評を買うであろう。
さらに、電話とISDN通話はロケーションの交換に基づいて課金されるため、'市内'専用線の長さによって都市間に大きな差異が生じることがあるかもしれない。ユーザーは何十年もの間、電話の市内課金地域の不規則性にさらされてきたのであり、それを疑問視することもないであろう。しかし、専用回線の料金を決めるために市内交換地域の定義に変更をもたらすことは、その妥当性と論理について多くの議論を醸すこととなるだろう。これは避けて通るべきことであろう。
例えば専用回線NTUやファイバ・アクセス・ケーブルのように、専用線の多くは電話やISDN回線よりも固定費が高いという要素があるが、この高い固定費のために、(専用回線には)ISDNの2帯域に対してではなく、距離と無関係の一律料金を採用すべきだということにつながるという議論があるかもしれない。その論理でいくと、距離が短い場合の伝送コストは固定費に比べれば無視して良いほど小さいということである。
しかし、ドイツのユーザーや規制当局、業界アナリストは、ISDNと専用回線との関連性について気がつくであろう。今後('帳尻合わせ'のために必要になりそうな)市内通話料金のわずかな値上げがいくらかのユーザー、特にインターネットにダイアルアップ接続を利用するユーザーには大きな影響をもたらすかもしれないが、専用回線の料金変更に基づき、電話とISDN通話に対して距離に無関係な一律料金を採用するようにDTにプレッシャーがかかることが予測できる。
DTとKPNの動きは、西欧における'距離の消滅'が始まる前兆であると見ることができるのか? そうであろうと考える。DTとKPNによるこうした動きは急進的、(逆戻りができないことから)冒険的であり、また前向きなものであると見る。両者とも、このステップを踏んだことを称賛されるべきであり、将来こうした動きがさらに続くことを期待するところである。
こうした動きのひとつは'時間の消滅'になり得るかもしれない。伝送コストが安く、距離に対する課金を適用するべきでないとすれば、時間帯を正当化する理由があるだろうか? もともと最繁時のピーク状態を緩和し、トラフィックを24時間でもっと均一化して配信するために導入されたが、大量の過剰容量と安価な伝送コストにより時間帯の設定は取り除かれる、あるいは少なくとも時間帯の料率差を引き下げるべきである。
ピーク時間に関するスイッチング容量のコストに時間帯料金を適用することを考慮しなければならないとしても、こうしたコストも下がっているのである。特にIPもしくは他の'非同期'パケットモードのボイス・スイッチングが使われるところでは安くなっている。
しかし、DTは時間帯についてもうまく利用しているかもしれない。だから同社のビジネス・ピーク時の料金は、オフピーク時の料金に比べ25〜33%高い。これは、KPNのビジネス・オフピーク時の最低料金に比べビジネス・ピーク時の料金が180%程度高くなるのとは好対照である。DTは'距離の消滅'と同様'時間の消滅'をも指南できるのか? そうであることを願う。時間帯の設定に賛成する論議は減りつつあると信じ、またユーザーは誰も時間帯や電話するタイミングを気にしたり、あるいはサービスプロバイダーの比較検討をしなくてももいいことの方を好むであろうと信じるからである。
(C) 2003 Telecommunication Ltd.
(原文)
DT and KPN Introduce Flat Rate Leased Line Tariffs Could this spell 'The Death of Distance' again?
Aug.15, 2003
Over the last several years, we have often heard telecoms operator staff and industry observers say that a particular change or dynamic in the industry spells 'the death of distance'. By this, it is meant that there is no longer a premium associated with longer distance services.
The main drivers behind 'the death of distance' were:
* reducing costs of fibre transmission, and
* growing capacities that can be achieved from a given fibre cable, for instance using technologies like DWDM, coupled with reducing costs associated with such equipment.
In recent times, temporary drivers have added to the demise of distance:
* a glut of capacity on many routes, as a result of over-provision in the late 1990s, and
* 'distress sale' price levels being paid for the capacity glut (including for the operators that installed the capacity) and for terminal equipment such as DWDM.
The current, temporary low prices for capacity and terminal equipment are a direct result of over-provision, accelerated by the failure of many of the operators that built the original networks, and the manufacturers that supplied the operators with equipment, often linked to loans from the manufacturers.
The 'death of distance' has also been claimed because of what in the US is called 'postage stamp rates' for telephony. The term 'postage stamp rates' is used to mean a single per minute rate for all telephone calls, irrespective of distance. However, this may be peculiar to America, where it is common for local call charges to be bundled into telephony line rentals, whereby the perception has developed that local calls are free and call charges only occur in relation to long distance calls.
In recent years, a single rate for all non-local calls has been introduced by a number of telecoms operators, but a 'death of distance' will only occur when local and long distance calls are charged at the same rate. Given the large price reductions this would imply for long distance calls, such a move is unlikely in most countries for a long time. (This depends on the size of the country, of course, with some like Andorra, 468 sq km, and Lichtenstein, 160 sq km, having little scope for charging long distance rates, anyway). Nevertheless, a single distance-independent call charge is something we can expect in the future, especially if IP (or its as yet unknown successor) becomes the standard for local as well as long distance voice, and the current distance-independent model employed by the Internet applies to voice as well as data services.
Despite previous claims, we believe that the move in recent months by DT (Germany) and KPN (Netherlands) to distance-independent leased line charges is a significant event for European telecoms. While the Netherlands is fairly small (37,330 sq km, 15th largest country in Western Europe) Germany is large (356,910 sq km, 4th largest country in Western Europe, after France, Spain and Sweden). Irrespective of size, it is a brave move by these operators to adopt distance-independent pricing for several reasons:
* the price for very short distance lines will go up - at least for new orders - and this will not be popular for users of these lines
* average revenue per leased line will fall dramatically, and
* users will be inclined to use, on average, longer circuits.
On the last point, if there is no charge for distance, private networks users and service providers not entitled to buy on wholesale terms, are likely to adopt different network topologies. With no premium charged for distance, the minimum number of network servers or nodes required in order to ensure redundancy is two, far less than is likely to apply now.
An example of the above might be a national retail multiple, with shops in the centres of all medium and large towns, using a leased line-based data network. Currently such a network is likely to feature regional distribution nodes, with higher-bandwidth circuits from the central site(s) to the distribution nodes. In such cases, the distribution nodes often decrease the MTBF (mean time between failure) and overall reliability of the service (on the basis that the more components there are, the higher the probability of a service failure).
With distance-independent pricing, each remote site can be connected to the central site(s) using direct leased lines, with a very simple star configuration, rather than the hierarchical network described above. Where back-up is required, ISDN could be used where the bandwidths are appropriate, or some form of triangulation could be adopted to more than one central site, for instance at a lower bandwidth than the primary connection.
If there is an increase in the use of longer lines, connected directly back to central site(s), then clearly DT, KPN and their followers are likely to see a double hit on leased line margins:
* firstly from the major reduction in the average price, and
* secondly from the increase in average cost due to the increase in average leased line length.
As stated before, the Netherlands is a lot smaller than Germany and therefore the issues are not as great for KPN as for DT. However, an interesting point regarding DT is that it is one of few operators to offer ISDN interfaces on leased lines as a standard option. Looked at from this perspective, that leased lines are really just 'nailed-up' ISDN circuits, DT's ISDN pricing structure ought to apply to DT's leased lines too. But it did not and still does not.
DT's ISDN call charge structure is simple, there is a local call charge (per minute) for several time of day bands, and a long distance call charge (per minute) with the same time bands. The long distance charge is around 50% higher than the local call charge (per minute). Imagine if this was applied to leased lines, that is, just two distance bands. It would be simple, but very unpopular with users whose lines were slightly longer than 'local' lines.
Furthermore, as telephone and ISDN call charging is based on exchange locations, there would be major anomalies between one town or city and another, as regards how long a 'local' leased line could be. Users have been exposed to the idiosyncrasies of the telephone local charging area for decades, and probably no longer question it. But to change to using local exchange area definitions for determining leased line charges would open up many arguments as to its suitability and logic, which would be best avoided.
As most types of leased line have a higher fixed cost element than telephony or ISDN lines, for instance leased line NTUs and fibre access cables, it could be argued that this higher fixed cost element suggests a single distance-independent tariff should be adopted, rather than ISDN's two distance bands. The logic is that the cost of short distance transmission is small enough to be ignored compared to the fixed costs.
But the link between ISDN and leased lines will not be lost on German users, regulators and industry analysts. We can now expect to see pressure being applied to DT to adopt a single distance-independent tariff for telephony and ISDN calls, based on the leased line price move, although a slight increase to local call charges (likely to be needed to 'balance the books') may have a large impact on some users, especially those using dial-up Internet access.
Could we view the actions of DT and KPN as signalling the beginning of the 'death of distance' in Western Europe. We believe so. We believe these moves by DT and KPN are radical, brave (for there can be no turning-back) and forward-looking. Both operators are to be congratulated for taking this step, and we look forward to more such moves from them in the future.
One such move could be the 'death of time'. If transmission cost is so low that distance charges should not apply, what can be the justification for timebands? Originally introduced to 'massage' busy-hour peaks and distribute traffic more evenly over the 24-hour period, massive over-capacity and low transmission costs should remove or at least reduce the ratios of timebands.
Granted, switching capacity costs in relation to peak hour profiles have to be taken into account in the use of timebands, but these costs are falling too, especially where IP or other 'asynchronous' packet-mode voice switching is used.
But DT may have timebands under control too, whereby its business peak rates vary between about 25% and 33% higher than off-peak rates. This compares to business peak rates being as much as 180% higher than the lowest business off-peak rates for KPN. Could DT be leading the way in the 'death of time' as well as the 'death of distance'? We hope so, as we believe there is a diminishing argument in favour of time bands, and that all users would prefer not to have to think about timebands, either in terms of when to call or in terms of service provider comparison.
(C) 2003 Telecommunication Ltd.
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